現代のスポーツでの常識では無理だと思いこまれてきたようなことを可

「身体から革命を起こす」甲野善紀、田中聡著より。
この本は武術家の甲野さんが一般のスポーツ科学とはまったく異なる方法で成果が上がることを述べたものをまとめたものだった。
一般のスポーツでは、反動を利用したり、筋肉の緊張を強いることによって、結果を出している。しかし、甲野さんは、たとえば歩く時には、地面を蹴るというより、前に倒れていくことで前に進めるという。
この本を手にとってみようと思ったのは、先日テレビで甲野さんが元柔道で格闘家の吉田秀彦氏に技をかけていたのを見たからだった。58キロの甲野さんがうつ伏せになった体重110キロの吉田氏を簡単に裏返してしまったのだ。
吉田氏はとのとき必死に返されまいと全身に力を入れていたが、それでも無抵抗だった。体重の重さは関係ないようだ。それこそ術と言われる所以だろう。
しかも、甲野さんはあまり力を入れた様子もない。まったく息も普通にしていた。一方吉田氏は、全身汗びっしょりで息も乱れていた。武術の奥の深さ、すごさを感じた次第。

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甲野さんの動きを見ていると、ものの考え方とか発想とかの転換を迫られる。
「身体から革命を起こす」甲野善紀、田中聡著より。
読み進むうちにいろいろな実例があっておもしろい。甲野さんの技術はいろいろなスポーツにも応用できるようだ。それは甲野さんの新しいことへの好奇心があるからでもあった。
アメフトの選手を跳ね飛ばしてしまったこともあるという。しかも体重が120キロもある選手だった。しかも、日本のトップクラスの選手のタックルも軽々とかわしてしまったようだ。
当時50代の甲野さんが、20代のアメフトの選手のタックルに勝てるとは驚きだ。この時もテレビで見た吉田選手のときと同様に、息も乱れず汗もかいていなかったという。アメフトの選手は汗びっしょりだったようだ。
この本の筆者の田中さんも今まで甲野さんが汗まみれで肩で息をしているのを見たことがないと語っている。一般常識では判断できないようなことが起こっていたのだ。むしろ私たちが常識と思っていたほうが間違いだったということもありうる。

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どんな世界でも、教師が「正しいこと」として教えるのは、すべて過去の習慣や制度のなかでの「正しいこと」にすぎない。

「身体から革命を起こす」甲野善紀、田中聡著より。
このあとには「どれほど確からしいことも、視点を変えれば疑わしくなるものであり、その信憑性を支えているのは、なんらかの制度である。」ともあった。
実に新鮮な考え方だとも思える。甲野さんは、固定観念がいかに発想を拘束するかについて、いろいろな雑学的知識によって、説明しているようだ。
その一例として、缶切りをあげていた。缶切りは缶詰が発明されてから、40年以上も発明されなかったという。とがったノミのようなもので叩いたり、銃で撃ったりして開けていたらしい。
缶詰は頑丈であることが必要で、早く簡単に開けられる発想は後回しにされていたのだ。簡単に開けられないことが正しくて、同時に開けにくさまで大事にして、不便さを我慢していたのだ。
また走り方でいえば、地面を強く蹴って走るものだということも固定観念だった。強く蹴るほど速く走れるというのも思いこみらしい。ある程度は速く走れるから間違いではないようだが。

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プロのサッカー界もやはり科学的トレーニングに目かくしをされている・・・
「身体から革命を起こす」甲野善紀、田中聡著より。