鰹節というのは世界に誇るべき日本の宝といってよい食べものだ。

「食の堕落と日本人」小泉武夫著より。
鰹節といえば、今ではもう削られたものが真空パックに入っているものばかりが目に入る。しかし、私が子供の頃には木よりも硬い鰹節を削り器でゴシゴシとやって削ったものだった。今家庭でそんな削り方をしている人は稀だろう。
やはり削りたての香りはなんとも香ばしいものだった。この鰹節は世界でも群を抜いて硬い食品だったのだ。こんなに硬くなるのは、はじめカツオのいい部分をそのまま切りとって乾燥させたものかと思っていた。
しかし、実はそうではなかった。あの硬さは表面にカビを増殖させたものだという。一番カビ、二番カビ、三番カビまで発生させることで、鰹節内部の水分がカビに吸い取られてしまうからだった。
乾燥させるだけでなく、イノシン酸を中心とした旨み成分をつくり出してくれる。筆者は鰹節は日本料理の世界遺産とまで述べている。作るまでは実に手がかかっている。カツオを三枚におろしそれを煮る。薪を燃やしてばい燻し、それにカビをつけて作っていたのだ。
これを読んだ後、急に鰹節が食べたくなって、夕食時に納豆にパックに入った鰹節をかけて食べてみた次第。気のせいか一味違っていた・・・な。