秘伝は伝えなければ途絶えてしまう、危うい運命にある貴重なもの。

「絶品手づくりこんにゃく」永田勝也著より。
「秘伝」というとずいぶんともったいぶった言い方にきこえるものだ。筆者のいう秘伝とは、今まで誰に知られることなく、世の片隅でほそぼそと伝えられ受け継がれてきた技を意味していた。
こんにゃくは、本来淡いピンク色をしたもので美しくかつ美味なる食べものというのがちょっと意外だった。芭蕉の句の紹介があった。「こんにゃくの刺身もすこし梅の花
つまりこの句からも、梅の花びらのような淡いピンク色をしていたことがうかがえる。芭蕉は郷里の伊賀上野の名物「刺身こんにゃく」を好んでいたという。
こんなこんにゃくを作る方法は意外に簡単だった。(ただし材料が揃えばの話だが。)材料は生のこんにゃくイモとわら灰だけだった。大掛かりな道具や機械は必要なかった。
“本物ははるかかなたにあるものではない。我々の足許にちゃんと用意されている。”というフレーズもちょっと気になった。ちょっとしたコツやノウハウといったものは人々の地道な日々の営みの中から生まれてきている。
この一冊の中には秘伝といわれることが説明されいている。別の言葉では秘伝の公開ということになる。しかし、そんな一見単純明快と思われることでも、練習、試行錯誤がなければ本物に近づくことは出来ないに違いない。