蜘蛛の足よりも少なし街の友

森村誠一写真俳句のすすめ」森村誠一著より。
これは氏の作った写真俳句だが、私にとってはフレーズでもあった。ここには一枚の写真が掲載されている。それは六本木ヒルズにある巨大なクモのブロンズ彫刻だ。蜘蛛の長い足の下を人が歩いている。私もその下を何度か歩いたことはある。その風景を見て何かを感じて森村氏が作った俳句なのだ。
そこには次のような解説がついていて興味深い。氏が行きつけの店の女の子は地方出身で、ある週末客が少ない席での会話だった。彼女の次のような寂しい口調の言葉がきっかけで俳句を思いついたのだろう。
「郷里の町では、どこへ行っても知った顔に会ったわ。そんな狭さが息苦しくなって、東京に出てきたけれど、こんな大勢の人がいるのに、郷里よりも知り合いが少なくなっちゃったわ。」
ふと、自分のことを振り返ってしまった。果たして自分にも蜘蛛の足より多くの真の友がいるだろうかと。単に知り合いなら確かに大勢いるかもしれない。(仕事上の付き合いなら数百人になるかもしれない。)しかし、本当に友と呼べる人はどれほどだろうか。とくに年齢を重ねるごとに利害関係のない友人を持つのは難しくなりそうだ。
ネットを通じても心が通い合えば、その人は自分にとっては友人だと考えてもよさそうだ。そして、今年も気持ちがいい交流を続けたいものだ。と、この俳句を読みながら思った次第。