「疲れ」には心地よいものと嫌なものがある。

「疲れ」には心地よいものと嫌なものがある。
「PHP11月増刊号 特別保存版」より。
藤本義一氏が同窓会に出席したとき、定年を迎えた友人たちの中には、何の目標もなく、とにかく退屈な日々を送っている人もいるらしい。何もしていないのに疲れ切っているという。つまりそれが嫌な疲れだったのだ。なんとなくだるいというのもその一種だろう。
一方で、自分の夢に向かって進んでいる人もいるのだ。なかなか達成できなくても、心の充足感はあるという。どんなに疲れていても、何ともいえぬ満足感があるのだ。
藤本氏自身は大学を卒業するとすぐにシナリオライターの世界に飛び込んでいる。それだけの才能があったからだともいえる。十年間で三千本のシナリオを書いたという。徹夜は当たり前で、毎日くたくたになって書いていたのだ。それでも、日々心地よい疲れに包まれて、幸せだったと語っている。
また、氏は「退屈な日々なんてまっぴら御免。心地よい疲れを満喫するために生きている」と述べていた。それでこそいい仕事もできるのだろうな。

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やりたいことを諦めない。
「PHP11月増刊号 特別保存版」より。
藤本(義一)氏がかつて同窓会に出席したとき気になる人物がいたという。そのM氏は大手証券会社に勤め海外の支店長も歴任したものの、元気がなかったという。定年後の心配ばかりしていたようだ。そこで、藤本氏は「君の夢はなんやったんや」と聞くと「植物学者」になるのが夢だったという。藤本氏は今からでもなればいい、と植木屋の棟梁のところに行くようアドバイスしたのだ。
すると翌日M氏から電話があり、近所の植木屋を土日だけ手伝うことになったという。スゴイ行動力でもある。あるとき棟梁が倒れ、「あとは君に任せる。八十人の弟子と植木屋を継いでくれ」と言われたのだ。いまM氏は世界中を飛び回っている生活をしているそうだ。世界の一流ホテルや大使館には日本庭園があるので、当然日本の植物を熟知していなければ手入れもできない。豊富な知識と語学力でバリバリと仕事をしているそうだ。実に充実した時間を過ごしているのだろう。
サラリーマンから植木職人に転身とはスゴイ!やはり好きなことだからできたのだろう。

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一日二時間がんばってみる。
「PHP11月増刊号 特別保存版」より。
これも藤本(義一)氏の言葉だった。講演のなかで、よく時間の使い方について話をするそうだ。そこで、「一日24時間のなかで2時間だけ自分のやりたいことに集中する時間をつくりなさい」とアドバイスするという。
それは人間が集中できる時間はせいぜい2時間が限度だからだった。それを十年続ければ、ものすごく大きな力になるという。
講演を聞いたとしても、ただ聞き流す人ときっかけをつかむ人がいるそうだ。その小さいことが、大きく人生を変えるようだ。幸せになるヒントやきっかけは、自分のまわりにいくらでも落ちているものらしい。それを自分でつかみ感じるものだと語っていた。
藤本氏自身がそうやった日々を過ごしてきたからこそ、語れることなのだろう。そういえば、蛇足になるが東の井上ひさし、西の藤本義一として、シナリオ界では東西のよきライバルだったということも思いだした。両者とも直木賞を受賞していた。