新しいことを始める場合、最終的な決定権はトップにある。

朝令暮改の発想」鈴木敏文著より。
セブンーイレブンでは何か新しいことを始めようとするたびに反対するする人々を説得してきたという。これは会社でなくても、日々の生活でもありうることだろう。
その場合、やはり決定権は誰かを知らねばならない。一般の買い物なら財布のひもを握っているのは主人か奥さんかも大事だろう。また、時には子どもの意見も大事なことはあるものだ。
さて、セブンイレブンが顧客に美味しいパンを提供したいと、仕入先メーカーの山崎製パンに年末年始の工場の稼働を申し入れたら、やはり反対されたのだ。
年中無休のコンビニからすれば、新鮮なパンを提供するのは当然なので、その思いを何度もトップに伝えた結果ようやく納得してくれたそうだ。
ここで大事なのは、やるべき価値があると思ったら、説得する相手と自分の職位の違いなど関係ないということだった。本当に価値があれば相手に伝われば動かせるということだろう。

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相手の「縛り」を解けば説得できる。
朝令暮改の発想」鈴木敏文著より。
コンビニが銀行を作るという大胆な発想は今まで誰も思いつかなかったものだ。当然ながらはじめは内部からも反対者がでたようだ。
しかし、挑戦しようとする人間が語る未来の可能性や新しい価値に相手も、次第に共感して、過去の経験や常識を飛び越えるようにもなるという。
IYグループ側のメンバーは金融の素人集団だった。しかも、そこから出される意見は銀行側にとっては常識外れ、無理、困難なことばかりだったようだ。
しかし、実際に顧客の立場になって感じてみてほしいと、銀行側の人に働きかけて小売業の現場を体験してもらったという。そこで、新銀行の設立もすべては顧客の利便性を高めるためには必要だと理解してもらい、納得してもらったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・経験や常識の壁を破らなければ、感動を伝える仕事はできない。
朝令暮改の発想」鈴木敏文著より。
(前日のつづき)
ここでは、オリジナル高級アイスクリームを開発したときのことについて述べられていた。それまでは、低コスト最優先のアイスクリームを提供していたので、やはり無理、不可能という言葉がほとんどだったそうだ。
そこで、とりあえず試作品だけでも作ってみませんか、それでおいしくなければ商品化はあきらめる、ということにしたそうだ。
するとメーカー側の開発担当者は、自分たちの作った試作の味に感動し「ぜひ商品化したい」と一転消極論から積極姿勢に180度変わったのだ。
できない理由を一つ一つつぶしていくことで、可能性は高まるのだった。多少コストはかかても高品質の商品をつくるにはどうすればいいかと考えたのだ。
結果的にヒット商品になって、同業他社が伸び悩むなかで、業績を大幅に伸ばすことができたようだ。

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いまは顧客自身に「こんな商品がほしい」という意見のない時代。

朝令暮改の発想」鈴木敏文著より。
いま何が欲しいと聞かれても、すぐには答えられないことが多い。つまり目の前にないものについては答えられないのだ。
しかし、現物を見せられると初めて、こんなものがほしかったと気づくこともある。消費が飽和状態だと、どんな商品が欲しいかが自分自身わからないということだった。
消費者調査やアンケート調査は、誰が聞いても同じような結果がでるので、どこも同じような商品しかつくれないし、差別化できずに終わってしまうそうだ。
顧客は自分でも気づいていない潜在的ニーズについては答えられない。そこで大事なのは「仮説と検証」だった。いろいろ考えて、こんなものがあったらうれしいのではないかと考えるのが仮説だった。
誕生日にプレゼントを送る場合、もっとも感動してくれるのは、自分でも意識しなかったが、本当はこんなものが欲しかったものだろう。つまり自分の潜在願望を掘り起こしてくれるようなプレゼントなのだ。

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仮説は単なる「勉強」だけでは生まれない。
朝令暮改の発想」鈴木敏文著より。
(前日のつづき)
何か新しいことを始めるときに、人はとかく勉強から始めようとする。本を読み専門家の意見を聞こうとする。しかし、それは過去の経験の積み重ねをなぞるにすぎないことが多いと鈴木氏は指摘する。
温故知新という言葉があるように、確かに過去を知ることは大事だが、それに縛られているうちは、前には進めないだろう。さらに大事なことは、仮説だという。
それは単に勉強からは生まれないのだった。セブンイレブンが店舗にATMを設置するために自前の銀行を設立しようと考えたのも仮説だった。
すると学者も金融コンサルタントも、銀行業界の人も、収益源がATM手数料だけでは、コスト的にも成り立たないと否定論がほとんどだった。
その既存の常識に染まっていたら、セブン銀行は生まれなかったのだ。これが成功したのは常に顧客の利便性という立場で考えて、必要なものだと仮説しかからだった。
最後の行には「過去の経験の積み重ねをなぞる勉強だけをしていては、いつまで経ってもあたらしい仮説は生まれない」とあった。