あらゆる交渉の場で、「何を聞くか」「どう聞くか」が、成否を分ける

村上龍の質問術」村上龍著より。
このサブタイトルには、“カンブリア宮殿”とあった。つまりこのテレビ番組のなかで村上氏がどうやって質問を考えているかが語られているのだった。
テレビ番組のなかでは、さりげなくゲストの登場人物に質問しているようだが、じつはかなり練られたものだったのだ。そんなこともこの一冊を読んでみて感じた次第だ。
学校時代を振り返れば、すでにできた質問や設問に答えることだけをやってきたことがわかる。繰り返し行われたテストはまさにそれだった。しかし、質問をつくるというような経験はほとんどない。むしろそちらの方が難しい。
難しいにもかかわらず、訓練を受けたことは一度もなかった。インタビュアーはつねに相手の核心にせまった質問ができなければ、価値はない。村上氏は、自信のこの番組での経験が読者にとって参考になればと語っていた。


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核となる質問は、本質的で、コアな疑問が浮かび上がることによって生まれる。
村上龍の質問術」村上龍著より。
質問と一口にいっても、本当にこれだけは聞かねばならないという質問と、それとは直接関係ないが相手の気持ちを探ったりその場を和ませる質問もあるのだろう。
たとえば、インタビュアーと何らかの共通点があったり笑いが取れたりすれば、話もスムーズに運ぶかもしれない。また、相手のことはあらかじめ知っておくことも基本だとも思える。
何の準備もなしに話を伺うことは実に失礼なことだとも思える。準備や予備知識がなければ、相手に何を聞いていいかもわからないだろうし、相手の言うことも理解できないだろう。
村上氏は大切なのは常識にとらわれない好奇心だという。「あれ?なんでこんなことが可能だったんだ?」「これはちょっとおかしいぞ」というようなことらしい。
つまり素朴な疑問は質問する上で大事なことだったのだ。たとえば、富士フィルムを例に出していた。このメーカー以外は事実上全部消滅していたが、そうそもどうしてフィルムメーカーはそれほど数が少なかったか、などだった。

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成長していった企業には、その歴史の中に、必ず「転機」がある。
村上龍の質問術」村上龍著より。
かつて、NHKの人気番組に「プロジェクトX」があったが、そこで取り上げられる企業や団体、あるいは個人には、いくつもの大きな試練があった。また、だからこそそれをどうやって克服したかがドラマとしてとりあげられる要素だったのだろう。
だから、創業から順調に業績を伸ばして成功している企業は取りあげられなかった。どれくらう大きな試練に耐えたか、またプロジェクトを成功させたかが見せ場だった。
つまりここでいう「転機」をどうやってきたかが問題だった。環境の変化は否応なしにやってくる。たとえば、IT革命で企業はすべて変わらざるをえなかった。その時代の環境の変化にどれだけ適応できるか、また先取りできるかが生き延びていくのには必要不可欠だった。
転機は、試練ばかりではなく発見や発明、新製品の開発にも言えるだろう。技術革新やとてつもない効率化も入るかもしれない。メーカーだけでなくサービス業でも画期的なサービスが考えられれば、他を引き離すことができる。それも転機といってもよさそうだ。