天才数学者にはすばらしい美的感性がある。

「達人に訊け!」ビートたけし著より。
ここでの達人は数学者の藤原正彦氏だった。タイトルは、“数学者は美しいのがお好き”、とあった。数学の美しさというのはシンプルさというのが一つの重要な判定条件だという。
なるほど、そう言われればいろいろな定理や公式というのも分かりやすいものだ。しかも、それに当てはめることでするすると答えが出てきた時は気持ちがいいものだった。美しいものはみんなシンプルだというのが藤原氏の意見だった。
また、数学の天才が生まれた場所に行くと、必ず美しいものがあるという。美の存在、何かにひざまずく心と、役に立たないものを尊ぶ精神の三つが天才の誕生には必要だともいう。おもしろい指摘だ。
逆に役に立つものばかりを追うような国からは天才は出てこないようだ。一見文学、芸術など役に立たないものを尊ぶくにからしか天才は出てこないとも言う。しかし、結果的には、美しい数学がつくられると、宇宙、化学、生物、経済・・・とさまざまなものに役に立っているのも不思議なことだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
情緒力がないと才能のブレークスルーって起きない・・・
「達人に訊け!」ビートたけし著より。
(前日のつづき)
これもやや似たようなことになるが、藤原氏は日本の天才数学者で文化勲章を受賞した岡潔先生について述べていた。その文化勲章をもらったときに、天皇陛下から「数学の研究ってどうやってするんですか」と聞かれたそうだ。
すると、岡先生の返答は「情緒で致します」というものだったという。陛下はそれで納得したかどうかは不明だが、実にシンプルで意外な答えだ。その後、新聞記者が突っ込んで「先生がおっしゃった“情緒”ってどういうものですか」と質問したそうだ。
これには「野に咲く一輪のスミレを美しいと思う心です」ときっちり答えたという。藤原氏は、おそらくこの新聞記者はそれでは意味がわからなかったと思うと述懐している。
しかし、数学者なら岡先生の言ったことの意味はよくわかるようだ。つまり、野に咲く一輪のスミレの美しさに感激して、愛情を持つ。それが数学の研究と同じだということだった。
蛇足ながら、たけしさんは、1から奇数だけを足していくとその和はいつも2乗になっていると話していた。確かにこれも奇跡的な美しさででもあった。誰がはじめに気がついたのかもしれないが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・