映像や声は、その人の言葉に肉をつける、体温を与える。

朝日新聞」2013.6.5付けより。
たまたま数日前から、テレビに関することに触れていたのでこの記事が気になった次第。これはコラム「CM天気図」のなかで天野祐吉さんが語っている言葉だった。
実にシンプルでわかりやすい。テレビCMは当然ながら多くの人に向けた商品の宣伝だから、記憶に残らなければならない。またインパクトも必要だろう。
視聴者は見たまま感じたままをストレートに受け取ってしまう。制作者側はそこを計算しつくしているのだ。そこが文字情報と大きなちがいらしい。
文字にすればつまらないものが、声や表現から多くのものが伝わってくる。温かさやクールさ、かっこよさ、ダサさいところ(またそれもいいのかもしれないが)、素朴さなどさまざまなものが情報となっている。
しかし、テレビ映像ではそれもまた演出ということも考えられるから、注意が必要なのだろうな。ニュースやノンフィクションのドキュメントならそういうこともないのかもしれないが。

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どんなに上手に原稿が読めても、取り上げるニュースに対する理解や共感がなければ・・・
朝日新聞」2013.6.8付け(土曜版)より。
“元気のひみつ”というコラムのなかで、NHKのキャスター井上あさひさんをとりあげていた。「ニュースウォッチ9」ではいつも落ち着いたしゃべりが印象的だ。
しかし、彼女をインタビューした、このコラムの筆者によれば、井上さんは毎回緊張の連続で背中にも汗をかいていると語っていたそうだ。
1時間ほどのニュース番組だが、その準備には相当な時間を費やすようだった。出社して視聴者からの手紙に目を通し、ひたすらその日のニュースをチェックするという。
まあこれは当然なことだろうが、さらに少しでもあいまいな点があれば、調べて自分なりの考えをまとめておくそうだ。そんな準備があって初めて本番をむかえる心構えができるのだろう。
はじめに取りあげたフレーズのあとには、「…薄っぺらさが見えてしまう。何をどう話すか頭から離れることはない」と続いていた。そうそう、彼女の元気のひみつは“しっかり食べておくこと”だそうだ。やはり好感がもてるキャスター稼業も体力勝負のところがポイントかな。

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しばしば「受注産業」という言い方をする。
朝日新聞」2013.6.8付け(土曜版)より。
あまりじっくりは読んだことはないが、“逆風満帆”というコラムで取り上げられていた阿川佐和子さんのインタビュー記事が目にとまった。
実際に頻繁にテレビに出演し、本の出版でもベストセラーにもなっていることから、超ご多忙な人だということはわかる。しかもあの小柄な体ですごいバイタリティを感じさせる。
テレビ番組でインタビューするときにも、言葉に迫力を感じることさえあるものだ。そんな彼女に対して、こえからやりたいことについて質問すると、「考えはなにもありません。受注産業ですから」と答えたそうだ。
実にユーモアに富んだ返答でもある。しかしその裏にはどんな仕事もこなしていこうという意欲があるからとも思える。仕事のスタイルは自分のやりたいことを申し出るというより、「やりませんか」と誘いを受けて、一緒に企画を練り、作り上げていくそうだ。
当然ながら力があるからこそ注文をする人が多いのだ。しかし、30年間仕事をしても自信がないと語っているのが不思議なくらいだ。
現在でも厳しかった父親の抑圧からか、仕事には自信がないと語る。しかし今の若者からみれば、父親よりこの佐和子氏のほうが知名度は高いと思われるが・・・

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忙しい毎日の合間をぬって、絵本の構想を練っている・・・
朝日新聞」2013.6.8付け、土曜版より。
こう語っているのは、101歳の日野原重明氏だった。このお歳でも忙しく仕事をされているとは、いつもこのエッセイ「101歳あるままま行く」を読むたびに驚かされる。
内容はとても高齢者が書いているとは思われないほど、やる気に満ちている。100歳を迎えた年に、何か新しいことを創めようと思い、「童謡・童話作家になる」と宣言したという。
氏は昔からアンデルセンがすきだったそうだ。それにしても、創作ということになれば、かなりのエネルギーが必要だと思われる。その力はどこから生まれてくるのか不思議だ。
そういえば、世界最高齢で、男性の長寿記録を更新していた京都府木村次郎右衛門さんが12日午前2時8分、老衰のため地元の病院で116歳で死去した、というニュースが流れた。
少子高齢化といわれているように、今後は高齢者ばかりどんどん増えてくるが、健康でいつまでいられるかのほうが大事なことだ。やはり何らかのやりがいを持っていたほうが張り合いがあるのかもしれないな。

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給料をもらうということは、ゲームに参加させてもらえているということだ。
「発想力」齋藤孝著より。
プロ野球の世界でも一般の企業でも即戦力を求める傾向があるようだ。じっくりと育てて戦力になってもらおうというほど会社は待ってはくれないようだ。
かつては、新入社員で入ってから数年間はさまざまな研修があって、会社側にも新人を育てようという気があったようだ。しかし、今ではすでに力があると思われる学生だけを採用しようとしている。
人事担当はある意味、スカウトとも考えられる、希望する学生のうち将来性がある学生だけを採用するのだが、必ずしもうまくはいくわけがない。しばしばマスコミでも言われるように、3割は3年以内に退社してしまうらしいから。
いずれにしても、2,3年は給料を払いながら仕事を覚えてもらうというのが、会社のやり方だろう。しかし、そんな会社側の思惑とは異なり辞められたら大損になってしまう。
ならば、できるだけ即戦力を求めようということにもなるのかもしれない。プロ野球でもスカウトの目で判断して、ドラフトで指名するわけだが、必ずしも上位の選手が5年後10年後にも活躍しているとは限らない。まあ、そこが面白いところでもあるのだろうが。
半人前のうちでもある程度の給料はもらえる。それはゲームに参加させてもらっているということでもあるようだ。あとは、それを面白くできるかどうかは本人次第かも。

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世間話ができるということだけでも、コミュニケーション力としてはあるレベルに達している。
「発想力」齋藤孝著より。
ここでの小タイトルは“カットイン会話術”となていた。なんだか聞き慣れない言葉だった。まず世間話の前に、「間がもたない」や「気まずい」という感覚を持っているかどうかが問題だった。
ある意味その場の空気が読めるかどうかということでもあるだろう。すでに話が盛り上がっているときに、つまらない質問でその場の話を途切れさせてはまずいのだった。
齋藤氏は会話のうまさは、車の運転に似ているという。つまり車の車線変更にたとえていて、初心者ほどうまくいかないからだった。ここでのポイントは若干加速しながら隣の車線に入ることが大事だったのだ。
車も話も流れに乗るために必要なのは加速だった。だからこそカットイン会話術を意識することだったのだ。流れについていく「間の感覚」を身につけたいものだな。