寝る前に訳わかんない話をするのは脳にとてもいい・・・

「頑張りのつぼ」兵頭ゆき著より。
この一冊はニューヨークで大活躍する日本人と兵頭さんの対談だったが、上記フレーズは日本画家の千住博さんの言葉だった。千住さんと言えば、三兄妹がそれぞれの分野で活躍して有名だ。
そんな子供たちに育てた母について述べられている部分で、毎晩寝る時には母は違った童話を創作して3人に聞かせてくれたのだった。そして聞いているうちに寝てしまったという。
寝ている間に脳は働くから問題提起させておくと脳は必死に動いているらしい。そんなことの繰り返しからイマジネーション豊かに育ったと千住氏は考えていた。
3兄妹が揃ってイマジネーションやクリエイティブが必要とされる芸術の分野で活躍できたきっかけはそんなところにあるらしい。しかし3人が子供の頃は、両親とも厳しかったという。

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全員が浪人で、なおかつ中に入ってみたら五浪の人がいちばん多かった。
「頑張りのつぼ」兵頭ゆき著より。
これも千住さんの話だった。芸大に二浪で入るだけでもすごいことだった。千住さんの学年には現役で入ったのは一人もいなかったという。
まるで別世界の大学のように思える。何年かかっても誰もが第一志望の大学に入りたいと思っているのだろう。並みの神経なら三浪もすればめげてしまいそうだ。それだけ必死の人たちばかりが集まっている大学で世間一般の大学ではにことがわかる。
何浪したからといって合格する保証はないから厳しい。父親は慶應だ学の教授で、第二志望で慶應を受けることは絶対させなかったという。そして、人生常に第一志望だけで生きていけと、芸大以外は受けさせてもらえなかったという。
今どき、こんな厳しい教育方針の両親はいるのだろうか。千住さんは絵はうまかったそうだが、彼よりうんと絵が上手な人たちは、結局絵描きにはなっていなかったという。
しかし、千住氏はめちゃくちゃ絵を描くことが好きで、それを人に見せたいと思っていたそうだ。だから、絵以外、自分を生かす道はないと思っていたからこそ、芸大に落ちた時でも何時間描いても苦ではなかったという。一流になる人はやはりどこかが違う。

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NYの芸術家の七十パーセントは二年間でいなくなってしまう。
「頑張りのつぼ」兵頭ゆき著より。
当時、千住さんはニューヨークにアトリエを構えて活躍していた。そしてNYに来た理由も次のように述べていた。どこまで本当か冗談かわからないが、芸術家として成功する条件があるという。
1、自信。2、勇気。3、才能。4、NYに住む。NYは芸術において世界の中心だからという。NY自体がひとつの大きなコミュニケーションの中心だと考えていた。
日本で成功するのと世界を相手にするのとはまったくレベルが違うと実感していた。二年で70%の芸術家が挫折してしまうということは、それだけ競争が激しいことの証明でもあった。
しかし、千住氏はそこに十年以上も在住して活躍していたのだ。日本でいくら評価されても世界の見る目は違っているようだ。常にその次その次が試さされていたのだ。
しかし、それでも好きだからできる、また今が人生の本番だと千住氏は語っていた。すると兵頭は、「確かに人生にリハーサルはないんですもんね」と返していた言葉も印象的だ。

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イマジネーションとコミュニケーションがあるものはすべて芸術・・・
「頑張りのつぼ」兵頭ゆき著より。
これも千住さんの言葉だった。芸術には当然ながらイメージがなければならないことはわかる。しかし、コミュニケーションとは意外な気がした。
まずは、プロの画家は風景を見ておもしろいから描くというより、先に自分の中にイメージがあることが大事らしい。イマジネーションががまず頭にあるかないかで、勝負がもうついているとまでいう。
そしてイマジネーションを共有することでコミュニケーションが可能になるようだ。また、スポーツにしても、料理、音楽もすべて芸術という考え方もできるらしい。
たとえば、料理はイメージを駆使して作る。次に一緒に食べれば楽しいコミュニケーションができる。それは幸せな気分となる。道にきれいな雑草があって、それを採ってコップに挿して話をするだけでもコミュニケーションとイマジネーションがあるという。
別に複雑な話ではなかった。千住氏はそんなことも芸術と捉えていた。そして、そのような一つ一つの積み重ねが心を豊かにしていくと考えていた。なんだか楽しい生き方のヒントでもあるような気がしたな。