スポーツマンガを、景気づけに読む・・・

「スポーツマンガの身体」齋藤孝著より。
この本のタイトル自体が何となくユニークに思えて手に取ってしまった。齋藤先生の専門は元々「身体論」だという。スポーツマンガには、素晴らしい身体表現がたくさん出てくると指摘していた。
そして氏は、みずからのスポーツ体験と思い出しながら、絵の世界の潜り込んでいくという。これは楽しいことに違いない。この本の中では身体感覚をマンガ表現にまで高めているもの7作品を取り上げていた。
それらは、「巨人の星」「あしたのジョー」「スラムダンク」「バガボンドバタアシ金魚」「奈緒子」「ピンポン」だった。中には既に熱心に読んだ作品もあるかもしれない。
私は成人以降は、ほとんどマンガを読むことはなくなっていた。それまでもテレビアニメで見る方が多かったかもしれない。上記のなかでは、「巨人の星」をテレビで毎週観たものだった。スポ根マンガと言われた作品だったろうか。
齋藤氏は、仕事を始めるのに気が乗らないときなどは、このようなスポーツマンガを景気づけに読んで、気持ちを盛り上げているようだ。マンガの面白い効用にも思えた次第。問題は、のめりこみ過ぎてへとへとになってしまうのが欠点らしいが。

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巨人の星』には、昭和の日本の時代風景が色濃く見られる。
「スポーツマンガの身体」齋藤孝著より。
このマンガはたんにスポ根マンガとしてだけしか、みていなかったが、そういえば、そんな見方もあるものかと気づかせられた。ストーリー自体も奇想天外で面白いものがあるが、時代背景も今から考えるとレトロ感がるものと言えそうだ。
ただし、このマンガに親しんだ世代はもう50代以降ではないだろうか。原作者の梶原一騎は長嶋や王、川上監督ら実在の人物をストーリーに織り交ぜているところも得意技だったらしい。
実際に試合中に起きた事件などもストーリーの中に組み込まれていたのだ。そうすることでリアル感も出てくる。また齋藤氏は、このマンガには時代の身体性がよくにじんでいるといい、次の3点を挙げていた。
1、身体に無理をきかせて最後にはぶっ倒れる。2、汁の多い身体(涙、汗、血のことだった)。3、父の身体(からだを張るという意味で)。とくに「やりすぎる」というのがこのマンガの登場人物の特徴だったようだ。
いずれにしても、このマンガのストーリーを通して、昭和30年代から40年代の昭和の風景を懐かしめるかもしれない。そうそう、(星)飛雄馬という主人公の名前は、ヒューマニズムから来ていた、ということもここで初めて知った次第。