歳をとればとるほど元気になっていく人間などどこにもいない。

冬の花火村上龍著より。
この当たり前なセンテンスが意外にも気になった。あえてそれを文字したことで、意外性が感じられた次第。
これは小説で、その主人にこう語らせている。「わたしはこの春で五十四歳になる。基本的に怠惰で、苦労がない人生を送ってきたからだろうか、歳よりも若く見られることが多い。」
年齢こそ異なるが、まるでそれは自分自身のことのようでもあった。まあ、年齢の割にどう見られようとも、そんなこととは関係なく歳を重ねれば体は弱っていく。
たまにかつての同級生にあったりすれば、あっちが悪い、こっちが悪いとかこんな病気になってしまったなど、そんな話題は年齢に比例して増えるものだ。
ちょっとしたことで腰を痛めたり、たまにふだん使わない筋肉を使えば、その回復も遅くなっていることにも気づく。あとはだましだまし日々過ごすしかないのだろうかなぁ〜

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働く場所というのは、単に金を得るだけではなくて、そこで社会とつながっているということも大切な要素・・・
冬の花火村上龍著より。
このセンテンスもまた、前日同様に当たり前のことを語っているだけなのだが、そうそうそうだったのだと思い起こさせてくれるものだった。
働くことは、ある意味社会的責任を果たしていることでもあるだろう。自分では単にサラリーを稼ぎに行っているだけだと思っていても、否応なしに責任はついてくる。
しかし、人によってはあえて生活のために稼がなくても、親からの財産で暮らしていける人もいるものだ。そんなに人は、はたから見れば羨ましくも思えるが、社会とつながっていないということも考えられる。
職場があれば、それなりに責任もあることだろう。また人間関係の問題や、ストレスもあるもの。達成感や失敗などを通して、結果的に人も成長するのではないだろうか。
やはり単に好きなことだけに時間を費やしたり、趣味だけの付き合いとは異なった人間関係があることが必要にも思える。だから、ある意味金さえ十分にあれば、それだけで幸せかといえば、そうでもないことがわかる。

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小説というのは、制約があったほうが書きやすい。
冬の花火村上龍著より。
この中編小説のあとがきで村上氏が語っているなかのワンフレーズだった。そもそもこの小説は小池真理子との競作で一冊になっていたものだった。総合的なタイトルは「美しい時間」となっていた。
出版社からは、読者対象は五十代を想定して、しかも性的、暴力的な描写はNG、というような制約が課されていたのだ。村上氏はそんな制約は好むところだったという。
つまりそんな制約があるほうが書きやすかったようだ。氏は言葉を変えて、「約束事」でもあり、「制度」だとも考えていた。
氏は常に制度的なものへの挑戦と突破を自分に課しているという。だから、この小説も書きやすくすぐに書けてしまったと語っている。
確かに何でもいいですから、面白いものを書いてください、と言われるよりもターゲットが絞られて、条件もある程度あったほうが書きやすそうだということは理解できる。
ちょっとしたことをヒントにあっという間に書きあげてしまうのは、ベテラン作家の想像力のすごさだろう。

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相手にとって不要な接触を行うと、「逆宣伝」になる・・・
朝日新聞、土曜版」2010.8.28付けより。
これは、“勝間和代の人生を変える『法則』”というコラムのなかで目にしたフレーズだった。はじめの部分では、「なぜ、多くの企業は同じ内容の広告を、繰り返し見せようとするのでしょうか?」となっていた。
これはある法則に基づいているものだった。つまり頻繁に同じものを見せられると、そのモノに対して好意を抱きやすいからというものだった。
これは人にもモノにも言えることのようだ。しかし、この接触にはあつ条件があった。つまりそれは、出合い方が「中立的」または「好ましいもの」であることだった。
もし相手に対して好ましくないものだったら、それは逆効果になってしまう。それがフレーズにあげたことだった。しつこいセールスが嫌われるのはこんなことからもわかる。
ということは、いかに相手に邪魔にならないように接触できるか、そんなタイミングを計れるかどうかも成功、失敗のカギを握っていそうだ。

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魅力的なアイデアがあっても、「口べた」や「プレゼンべた」では伝わらない。
産経新聞」2010.8.28付けより。
“話題の本”紹介コーナーにあったフレーズだった。もしかしたら、もうこのフレーズだけでどの本の紹介がされているか分かってしまった方もいるかもしれない。
発売2カ月で八万部を突破しているベストセラー本だった。その本は『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン』だった。著者はプレゼンのコーチを務めるカーマイン・ガロ氏だった。
ポイントは“シンプルでメッセージ性のある言葉を練り上げる”だった。たとえば、「iPodはガムより小さくて軽い」「IPhon 3G.速度は2倍、価格は半分」・・・とまるで実にシンプルなコピーライティングのようだ。
シンプルだからこそ伝わりやすいのだろう。しかも、もう一つのポイントは、「練習」の重要性だった。そのことを上記フレーズにあげた次第。さて、この本(400ぺージもある)をいつ読むか・・・