論理を積み重ねていくところからは起爆的なものは生まれにくい。

「違和感のチカラ」齋藤孝著より。
必ずしも筋の通ったまっとうなアイデアがいい企画だとはいいきれないということを、齋藤氏は経験から語っている。その例として、氏がかかわったNHKの「にほんごであそば」という番組を引き合いに出していた。
この番組の天才的なセンスでヒットを生みだしてきたプロデューサーは、インパクトのないもの、観た人がオオッとならないもの、当たり前すぎて新鮮な面白味のないものにダメ出しをしてきたという。幼児向けの日本語番組ということを考えれば、日本語の上手な人を使うはず。
しかし、メインキャラクターはkonishikiさんと子どもたちだった。また幼児に狂言浪曲、四字熟語、論語まで教えようという試みだった。正攻法でNHKらしくなどと考えたらこんな発想は出てこない。
しかし、こんなありえなさが成功していた。幼い子どもたちが飛びついたのだった。だから、人の心をギュッとつかむものは、そうじゃないところから生まれると齋藤氏は語る。
安全や一般受けしそうなものは、あまり面白味がないのだろう。時にはこんな天才的プロデューサー感覚で、考え行動してみることも有効だと思えた次第。
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検索すれば何でも出てくると思ってしまうことが、現代の罠というか、落とし穴なのではないか・・・
「違和感のチカラ」齋藤孝著より。
今はもうほとんど何でもインターネットで情報を検索すれば、かなりのスピードで求める情報にたどり着ける。自分で考えるより先に、その情報だけで分かった気になってしまう。
便利なことは確かだが、それが習慣になってしまうと、疑問を持たなくなってしまうことも考えられる。はたして本当にそれは信じられる情報なんだろうか、なとどれほど考えるだろう。
人の考えをコピーしたところで、それは自分の考えとは言えない。たとえ思考力が低くても、それなりの文章は組み立てられてしまうかもしれない。でも説得力や重みはなさそうだ。
話はやや異なるが、「なんでも鑑定団」の鑑定する先生方は長年の苦労した経験から、本物と偽モノを見分ける眼力がついたのだろう。たんなる机上の学問だけでは無理に違いない。
だからこそ自信を持った違和感で見分けがつくのだろう。やはり調べる過程で苦労をすればそれなりに身に付くものはあるはずだ。創作物でも自分なりの創意工夫を重ねたものは長く忘れないものでもあるな。

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芸能人は世間力が高い。
「違和感のチカラ」齋藤孝著より。
まず、この世間力というのは珍しい言葉だ。きっと造語だろう。これは、齋藤氏によると「人に気を張りめぐらして、相手との<あいだ>に気づきを多くして生きているのが世間というものだ」という部分から判断すると、その力のある人という意味だろう。
齋藤先生は、頻繁にテレビに出演している。そんな経験から感じたこだった。同じ番組に出るタレントさんたちが、挨拶に来られるという。挨拶にきたところで何のメリットもないが、それが礼儀作法となって生きているのだろうという。
とくに芸能人は人とのつながりが大事な仕事だった。とくに資格もいらない。当然ながらオファーがなければどうにもならない世界だ。だから、挨拶や礼儀などの基本的なことができて当然なのだろう。
優れたタレントは状況判断がよく、そのメンバーでは自分はどういう役割を果たすべきかを、周囲への気を張りめぐらしながらその場を乗り切る瞬発力がすごいという。
ある意味アドリブ力(りょく)といってもいいのかもしれない。齋藤氏の言葉では違和感センサーになるのだろう。それが発達して、その場を盛り上げることができる人ほど仕事が継続できるのだ。
でも、それはテレビの中のタレントばかりとはかりとは限らないことにも気づく。とくに客商売や営業をしていたり、対人対応が多い仕事でも当然必要なことだとも思えてくる。改めて世間力の大切さを感じる。

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およそ相談というものは、その中身や結論より、それによって心を通い合わせることのほうが大事・・・
「1分で大切なことを伝える技術」齋藤孝著より。
いいコミュニケーションをするための一つの答えがこれのようだ。上司部下との関係も、相談をきっかけに円滑に進むこともある。
もし、部下から何らかの相談を持ちかけられれば、上司も何らかの形で力になろうと思うものだ。別に会社に限らず、友人どうしや家族内でも同じようなことが言えそうだ。
話すことで、また話を聞いてくれる人がいることで安心できることも多い。やや異なるかもしれないが、クレームなどもしっかりと聞いてくれる人がいることで不満の半分は解消できそうだ。
筆者はコミュニケーションの最強のツールは「相談」だとも言っている。要するにそれで心が通い合えばいいのだ。その具体的な方法について、齋藤氏は話をしながら紙に書いていのがいいという。
話の内容を図化するのは有効だろう。要するにそれで両者がイメージを共有できるからだった。混沌としたものも目に見える形にすることが大事なのだ。

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上司から部下に相談を持ちかけると、部下のモチベーションは格段に上がる。
「1分で大切なことを伝える技術」齋藤孝著より。
(前回のつづき)
こんなことは、意外になされていない。むしろ相談する方は部下、目下の者と相場は決まっているようだ。しかし、実際は相談はしにくかったりするものだ。
ところが、もし相談するのが上司だったりすれば、部下は自分は信頼されている、期待に応えたいという意識から、いいアイデアが生まれることもあるという。
もし、結果を求めるなら上司としてのプライドなど捨てたほうがいい、とまでいう。本当にこれができる上司は有能だと言えるのかもしれないな。
上司、部下もあらかじめ相談することのリストを作っておくこともいいのだろう。相談のクセをつけられるかどうかがカギだな。