今なお受験生のように日々練習。

ホームページ「どらく」10.9より。

今年の秋で演奏生活50周年を迎えるというピアニスト中村紘子さんのインタビュー記事があった。
3歳のとき幼稚園の代わりに「子どものための音楽教室」に入ったのがピアノを始めたきっかけだった。しかもその頃には子どもとはいえあまりに厳しく指導されたためか、当時を思い出さないようにしていると語っている。明治生まれの指導者の言葉は、まだ6、7歳の子どもには理解できないようなことばかりだったようだ。
子どもの頃は、大人になったら絵描きかロマンス小説家になりたいと思っていたと述懐する。しかし、ピアノの素晴らしい演奏を聴いてからは、一気にピアノにのめり込んでいったようだ。
そして留学先のジュリアード音楽院でのリジーナ・レヴィン先生との運命的な出会いがあったからこそその後の中村さんのすごい実績につながったのだろう。一流になる人の人生にはその後を左右する出会いがあるものだな。
余談だと語るが、ニューヨークに留学中にマッシュルームカットの4人組の若者を見てもそれがビートルズであることもわからなかったという。それほど、ピアノだけに集中していた一時期過ごしたということだろうな。
すでに超一流のピアニストになったにも関わらず、受験生のように日々練習を繰り返しているという。また超一流と言われるからこそ、それだけの練習が必要なのかもしれない。決して妥協しない気持ちを持ち続ける・・・凡人には簡単にはできないことだな。

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自宅でしこしこ練習しているだけではおもしろくない・・・

ホームページ「どらく」10.9より。
「ピアニストとしての原動力は?」という質問に対して中村(紘子)さんは“「好き」ということ”と答えている。演奏家は舞台という非日常の場でふだん味わえない音楽体験ができ、お客さんにからの反応を感じ取ることができることが素晴らしいと感じているようだ。
それは演奏家しか味わえないことだろう。お客さんの反応がわかるからこそそれが嬉しいと語る。譜面どおりにきちんと弾けていれば、一定のレベルまではいけるが、それだけでは人の心に響く演奏家にはなれないという。
そういえば、芸術関連のことはすべてに通じそうだ。絵画も作品を発表する場(展覧会)などがあればこそ、いろいろなテーマに挑戦していくこともできるのだろう。文芸作品も読者に大きな感動を与えられる作品は限られるのかもしれない。
やはりプロの演奏家はそこからが違うのだ。一つの曲をモノにするのには、場合によっては2年では足りないこともあるらしい。これほどのプロであってもそうなのかと思わせられる。それには日々の努力が必要で、自分の血肉になるまで弾き抜くことだという。最後は実にプロの世界の厳しさを感じさせる。
人に感動を与えるっていうことは、そうそう簡単ではなさそうだ。ホテルやレストランのサービスでも当たり前のことだけでは、何も感じない。やはりなにか素晴らしい、マニュアルを超えたサービスがあってこそ印象に残るのかもしれないな。そう考えれば、仕事はすべて発表の場だという考え方もできそうだ。そこで、いかに相手に満足をしてもらえるか、リピーターになってもらえるか、記憶に残してもらえるか・・・。結果が出なければ、創意工夫はまだまだ無限にあるのかもしれないな。

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ある香りを嗅ぐと、その香りに関係した記憶や感情が鮮やかに蘇る現象・・・
「メトロポリターナ」2009.10月号より。
この号の特集は「匂いおこせよ記憶の花」となっていた。匂いといえば、今窓を開けると庭からキンモクセイの甘ったるい香りが入ってくる。また住宅街を歩いていてもあちこちにこの匂いが漂っている。実に秋を感じさせる匂いだ。
いきなり話が横道にそれてしまったが、香りである記憶が蘇る現象を「プルースト効果」と呼ばれているらしい。これはマルセル・プルーストの大作小説「失われた時を求めて」からきているのだろう。これは主人公が紅茶に浸したマドレーヌを口にしたとたん、幼い頃の思い出が一気に蘇ったというものだ。
先ほどのキンモクセイでいえば、私の場合は小中学校に通った道を思い出してしまう。学校の近くの家に大きなキンモクセイの木があって秋になると、その木がオレンジ色のつぶつぶの花でおおわれて強烈な甘ったるい匂いを放っていたからだった。
当時は自宅にもあんないい匂いのする木が欲しいと漠然と思っていたものだった。そして、いつしかマイホームを持つようになって、今庭から流れ込んでくる匂いがキンモクセイだったのだ。この匂いもあと数日のピークを終えると、さらに秋の深まりを感じるだろうなぁ。