万全の準備をしてから、なんて言っていたら、ものごとなんていつまで

「eの悲劇」幸田真音著より。
久しぶりに小説を読んでみた。連作短編が4つほど掲載されていた。サブタイトルは“IT革命の光と影”となっているのもちょっと気になった。主人公は証券会社を辞め警備会社に再就職しガードマンをやっている中年男だった。
彼と一緒に配属されているのは親子ほども年齢差がある現代風の若者だった。その若者があるときデイ・トレーダーになろうと思うと中年男に相談を始めたのだ。それまで若者はある程度の運用成績をあげて今のガードマンの仕事に見切りをつけようと思ったらしい。
この中年男はかつて相場のプロとして仕事をしていたからこそ、若者は自分の背中を押してもらおうと一言相談したのだった。男は相場の厳しさを次のように考えていた。他人の金を動かしても厳しい世界。常に崖っぷちに立たされて、即断を迫られるのが宿命の仕事。落とし穴も地雷も、いつもすぐ足下まで迫っている・・・。
そして、やろうと決めたならやってみて、だめなら、やめればいい、というような半ば無責任の言葉を投げていた。そのあとで、上記のフレーズに続けて「・・・いつか、いつか、って言いながら、結局はなんにも始められない人間が、世の中には山ほどいる」と若者の挑戦に対して励まし送りだしてていた。
ものごとを始める場合にはかなり大きな決心が必要な場合がある。それもどれほどの準備をしたから十分だとは判断できないかもしれない。そして、万全を待っていたら結局なにも始めることはできないのだろう。まあ7割程度の状態または自信でいけるかどうかを判断すべきかな・・・