「買い物は投票行動です」

朝日新聞」2009.6.16付けより。
これは全面広告の中ではあったが、“池上彰のやさしい経済教室”というコーナーにあったフレーズ。昨日までとり上げた樋口裕一さんの文章もわかりやすいが、この池上さんの解説もわかりやすい。
ここでのサブタイトルには「わかりにくい経済をとことんわかりやすく」とあった。池上さんは以前NHKで「週刊こどもニュース」でわかりやすい解説をしてくれたが、それさえもご自身では満足していなかったようだ。自分ではわかりやすい解説をしたつもりでもまだ理解されなかったこともあるらしい。
最近では民放で大人向けにもわかりやすいニュースの解説をしてくれている。これを見ているとニュースのなんだか核心がわかっていくような気もする。
さて、タイトルにあげたフレーズだが、「買い物は投票行動です」のあとには「本当によい商品やサービスを選びましょう」とあった。ふだんあまり買い物の際には、それが投票行動などとは意識していないが、「応援したい商品を買うということで、その会社に投票するということ」だと池上さんは言っている。
単に安ければいいということではなく、よい商品を見極める目を養うことが必要だということだった。ここでは株式投資に関連したことが述べられているが、要するに賢い消費者になりましょうということなのだな。

///////・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


想像力に具体的なスパイスを与えつづければいい。
朝日新聞」土曜版2009.20付けより。
これは“作家の口福”というコーナーで作家の古川日出男氏が書いている部分にあったフレーズ。氏はしばしば、「どうやって物語を発想するのですか?」と尋ねられるらしい。しかし、それはいろいろあるので千差万別で即答できないらしい。
そこで、物語をどうやって紡ぐのかということになると、上記フレーズのようになるという。そして、ここぞというときの援軍として活躍するのが食らしい。
その具体例として、筆者はかつてアラブ世界を舞台にした大河小説を書いていた時期に、わざわざビールをエジプト産のステラという輸入ビールを飲んでいたという。
このお酒は遥かカイロからやってきたと考えながらビールを飲むことで、物語が骨太になったという。同様に、東北を舞台にした小説を書いた時には、ご当地のラーメンを食べ続けていたという。つまり、モノにこだわることによって、それなりの効果を確認しているのだ。
何かにちょっとこだわることで、それなりの結果もついてくるということだろうか。もちろんこれは氏自身だけに通用するノウハウかもしれないが。こんなノウハウが何かに応用できないものだろうか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「みんなと同じ」を求めるパーソナリティーが巨大ヒットを生んでいる。
「モノが売れない時代のバカ売れ心理学」和田秀樹著より。
もともとこの人は精神科医という肩書がある。もちろんたくさんの本を書く作家でもあるが。そんな人がモノを売るというマーケティングの世界をどう見ているのだろうか、というのも興味深かった。
といっても、売るためではなく、ヒットするものはどんな人が買うのかというような心理学的アプローチ分析という方が正確だったかもしれない。
ある歌がヒットしたからと言って、すべての世代から支持されているわけでもない。むしろ若者によってメガヒットが生まれていると考えた方がよさそうだ。
曲が発表される前に百万枚もの予約が入るのはおかしい。メロディーや歌詞にヒットの原因が隠れているわけでなかった。つまり、その歌手の曲なら始めから「買う」と決めていたのだ。熱狂的なファンのもつパーソナリティこそがヒットの要因だったのだ。
同様なことが先日発売された村上春樹の「1Q84」でも起こっていた。まだ発売前に数十万部の予約が入り、2週間で百万部を突破していた。これほどのハイスピードでのミリオンセラーは稀だろう。
マスコミで取り上げられる村上氏の知名度、期待度はすごいものがある。それも早く読んでみたいという熱狂的な読者がいたからこそだろう。
またそんなニュース自体が売れ行きに拍車をかけているに違いないな。「みんなと同じ」・・・いいのか悪いのか・・・