プロ野球を見るには2種類の楽しみ方がある。

朝日新聞、朝刊」2009.6.2付けより。
“EYE”というコラムで編集委員の西村欣也氏が書いていた冒頭にあったフレーズだった。また、このすぐ横には「連続試合安打24に。イチロー5月49安打」という大リーグの記事があった。
コラムとこの記事は一部関連した内容だった。ここでの記事では連続試合安打24となってしたが、今現在はオリオールズ戦の一回に左中間二塁打を放ち、自己タイとなる25試合安打をマークしている。もちろん大リーグの最多連続試合安打は、1941年にジョー・ディマジオヤンキース)が記録した56試合であることは有名だ。
さて、コラムのタイトルは「記録へのこだわりいさめた神様」とあって、先月17日に亡くなった記録の神様と呼ばれた宇佐美徹也氏について触れていた。84年阪神の福間投手が、当時稲尾和久が持っていた78試合登板という日本記録を破ろうとしていた時のことだった。
その時阪神の監督安藤統夫に手紙を書いたという。内容は「42勝を上げた鉄腕・稲尾と4勝の福間を登板回数だけで比べるのは記録ではない。そんなものにこだわるなら、自分はもう記録記者を辞めようと思う」だったらしい。
安藤監督は手紙の趣旨を理解して、福間の登板を77試合でやめさせたという。しばしば、ペナントレースも終盤になると首位打者本塁打の記録争いになって、いかにも数字争いだけになってしまうことがある。真剣勝負を避けるつまらないゲームを見せられる。
記録は真剣勝負の結果として見たいものだ。しかし、日本人が大リーグの野球を見る場合、チームの勝敗よりもむしろ日本人選手の個人成績や記録に目が向いてしまうのは仕方がないだろうな。


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「ただのイエスマンじゃ参謀の意味がない」
『「超」一流の自己再生術』二宮清純著より。
ここでの見出しは「王監督を教育した男」となっていた。男とは黒江透修氏だった。巨人を引退後は巨人、中日、西武、ダイエーのコーチや二軍監督を歴任している。優勝請負人とまでいわれ最高の作戦参謀でもあった。
ダイエー時代ミーティングで王監督と意見が衝突し、辞めるとまでいったことがあった。その時の黒の言葉が上記フレーズだった。内容は、王監督は2ストライク後のヒットエンドランを好んで使っていたが、2ストライク後は失敗する確率が高いと黒江は反対していた。その理由は、ボールに手を出してしまうからだった。
それで、黒江はヒットエンドランより失敗の確率が低くなるランエンドヒットを提案したが、王監督は頑としてきかなかったという。そこで、監督に2ストライク後のヒットエンドランの危険性を知ってもらうために、練習で2ストライク後、あえてピッチャーにボールを投げるように指示したことがあったのだ。
バッターはワンバウンドのボールを空振りして、三振ゲッツーになる。このように時と場合によっては、監督を教育することも必要だと考えていたのだ。しかし、試合ではコーチは監督に絶対逆らってはいけないともいう。監督の指示に従うのは当然だからだ。
監督が2ストライク後にヒットエンドランのサインを出しても、なんとしても成功させるために、ワンバウンドになりそうなボールでも当てさせたこともあるという。コーチが監督の采配に不満を持っているチームは弱いともいう。

(蛇足)
打者が打つことを前提に走者が走るのが「ヒットエンドラン」であり、走者が走ることを前提に打者は打つかどうかを決める戦術「ランエンドヒット」とは似て非なるものである。(参考、ウィキペディア

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労力的に一番、大変なのはプロ野球の担当記者である。
『「超」一流の自己再生術』二宮清純著より。
いろいろなプロスポーツがあり、それぞれに担当記者が存在している。しかし、その中でも一日の労働時間が長いのがプロ野球の記者らしい。
ホームチームとなると午後には練習をはじめるから、1時にはもう球場に着いていなくてはならない。試合が6時から始まり終わりは9時過ぎ、時には10時を回る。それから選手や監督の談話を取って記事を書く。球場を後にするのは11時か12時の間だという。一日のうち半分は球場にいる計算になる。
サッカーは前後半合わせて90分、ラグビーは80分、ハーフタイムを含めても2時間あれば試合は終わる。試合開始の1時間前にスタジアムについていれば何の支障もない。プロ野球記者に比べるとはるかにラクらしい。
男子マラソンは2時間6分から10分台、女子は2時間20分台から23分台で優勝が決まる。そう考えると、野球の試合時間が3時間以上は長すぎる。観る方も疲れてしまう。
最近はテレビでの野球放映も少なくなってしまったが、試合経過によって終わる時間も不確定だし、やはりゲームの時間が長過ぎるということもあるのだろうか。