「思いつく」のは才能の問題ではなく、脳に蓄積された情報量に関係す

「リアル仕事力」小阪祐司著より。
ビジネスにはテクニックやスキルを超えた力が必要だというのが筆者の主張だが、ここではそのうち「描く力」というものについて述べていた。描くとは具体的にわかりやすく表現するということだ。
人の心を動かすことができなければ、商売、ビジネスはうまくいかない。ここにはひとつの例があった。あるお茶店が作ったDMだった。そこには、皆様は、「もし人生最後の紅茶を飲むとしたら、この器で飲んでみたい!」という器をもっていらっしゃいますか。私はもっています。・・・」
そして、器の説明がされていたのだ。「同じ紅茶を入れても違う」「とても優雅な気持ちになる」ということが語られている。お客さんの反応は仕入れた60客全部がほどなく完売したという。送付したのは700通で実際には、仕入れがもっとあれば売り上げはさらに大きかったのかもしれない。
説明にただ、品質のよさやブランド名や価格だけ述べただけではこうは売れなかったであろう。また、こんな問いかけがなければ、「人生最後の紅茶を飲むとしたら」などとは考えないだろう。器に関心をもたせるための努力がうかがえる。
人によっては、これを人に自慢するための一品にしようと考えたり、親や親しい人への贈り物と考えたのかもしれない。短くても人の心を動かせる言葉はあるものだなぁ。つまりこれが描く力というわけだった。コピー力だろうか。
蛇足ながら、筆者は競馬が好きらしく、名実況がレースをドラマに変えるとも述べていた。同じ野球中継もテレビよりラジオで聞いていると迫力を感じるものだ。またアナウンサーの伝える技術も要求されよう。



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「期待させる力」は、「留まらない」ということに深い関係がある・・・

「リアル仕事力」小阪祐司著より。
ある町の小さな酒屋での出来事が書かれていた。ある日得意客から結婚式の引き出物として、ワインと日本酒の注文を受けたときだった。普通なら言われた銘柄のものをセットにして納品するだけで済む。
ところが、彼は新郎・新婦向けのオリジナルラベルを作成して、それぞれに貼ったのだ。また箱の中にはそれぞれの酒の説明書を入れていた。その説明には、「新郎のおすすめワイン」とあって、新郎の人柄の紹介があって、この人柄のように○○な特徴があるワインです。新婦についても同様に説明があったという。
このような趣向は、当然ながら新郎・新婦披露宴に参加された方々に喜ばれたとあった。やはり、ここまでやるか、というのを実行しているのがすごい。これが、ただホテルでの注文だったら味気ない寿ののし紙が箱につけられているだけであろう。
きっとあの酒屋の店主なら何かやってくれるのではなおだろうか、という期待があったからこそ注文を出したのだろう。日頃からの人間関係がなければ、このような注文もこないだろう。今がうまくいっているからと言って。そこに留まっていてはこのような発想は出てこないはず。
吉本興業木村政雄さんも、一流の芸人であり続ける秘訣は、一度売れてもそこに留まっていないことだという。あの人なら何かやってくれるだろうという「期待させる力」は、「留まらない」ことと深い関係があると小阪さんは考えていた。あとはそのお客さんが期待に応えられるかどいうかが問題だろうな。

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何事も常識だからと、それ以上考えることをやめてしまうことが危険だし、もったいない・・・
「リアル仕事力」小阪祐司著より。
一般的なことや常識ばかりにとらわれていると仕事が行き詰ったり、面白くもなくなってくる。一般的には、ゴルフ場のレストランでは男性客が9割で、パフェなどスイーツ系は充実してないだろう。むしろ取り扱ってない場合の方が多いに違いない。
ところが、あるゴルフ場のレストランではパフェの開発をウェイトレス4人に一任して4種類を導入したのだ。すると意外にも売れ出したという。コンペの打ち上げに1300円の巨大パフェを注文するという。3人のグループでも4種類注文する男性客も少なくないらしい。
そして、パフェを加えることでレストランを利用する女性客も増えたという。つまり、ここには私たちが好きなものがあると好評なようだ。結果的にデザートの売上も5倍になったという。ちょっと常識をずらすだけでよかったのだ。
人に感動を与える何かも常識や一般的なところから、さらに一歩進んだところにあるような気もしてくる。いまは当たり前になってしまったが、一家に一台のパソコンも、歩きながら通話するケータイも30年前の常識にはなかったな。

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多くの人は、練習量のわりに成果があがらないと感じる時期にやめてしまう。
「リアル仕事力」小阪祐司著より。
とにかく練習量こそが、技術の上達には必要不可欠だと感じる話があった。世界的に有名な心臓外科医の須磨久善先生は、たかい技術を習得するためには豊富な練習量と場数、手術の経験だという。
心臓の血管はティッシュペーパー一枚ぐらいの厚さだそうだ。それを縫うのは髪の毛よりも細い針と糸だった。きちんと縫い合わせないと、破れて出血してしまう。その技術の習得は人でするわけにもいかない。先生は犬好きで動物での練習もできなかった。
そこで、ティッシュペーパーを使って練習したという。ある技術に達するまで、数千枚縫い合わせたという。実に細かい作業を根気よく続けなければできないことだ。つまり「積み重ねる力」だなにより大事だったのだ。
相当つらいことはあったらしいが、医者にならなければよかったと思ったことはない、という。でなければ高い技術を要して、命にかかわる責任のある仕事はできないのだろうな。

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「成果」は、いくつかの原因の相互作用から生み出される。
「リアル仕事力」小阪祐司著より。
かつて筆者が「ビールが正価で売れる酒屋」のことを新聞のコラムに書いたことがあった。すると、その後「それはどういう手法なのか」という問い合わせがあったという。
実はそんな一つの手法があるわけではなかったのだ。そこの店主が取り組んでいたのは、お客さんとの人間関係づくりやお客さんの知らない酒の愉しみ方を教えて悦ばれ続けることだった。
そのような地道なことをコツコツと続けてきた結果として、ビールを正価で売ることもできたのだった。ここで大事なのは“売ることも”の“も”だと思った次第。お客さんはその店主からの情報が自分にとって役立つからこそその店を利用するのだろう。
価値にはそのビールの価格以上のものが含まれていいるに違いない。人は何かが成功すると、その手法はいったい何だろうと、ただ一つのものを見つけようとする。しかし、それらの成果は目には見るものばかりではなかった。
いくつかのものが作用していることが多い。むしろ目に見えないものにこそ、重要な要素が含まれているのだろう。そんな「見えないものを見る力」があるかどうかだな。学校の試験の答えのように「正解」があらかじめ用意されていることなどはないのだ。また、人から言われたとおりにやったところでうまくいかないことの方が多いかもしれない。結局はマニュアルに書かれている範囲内のことでは感動も予想以上の期待もできないかも。