「合理的なものほど美しい・・・」

「ミステリーとの半世紀」佐野洋著より。
この本は筆者の回顧録のようなもので5年間にわたって連載されたものをまとめたものだった。本のタイトルにある「半世紀」とは、佐野氏が初めての作品『銅婚式』を1958年に書いてから今年2008年までの50年間と一致していた。
上記のフレーズは筆者が中学三年のときに担任の先生が話した言葉だったのだ。しかも、それはその後の佐野氏にも影響を与えたようだ。この部分の一部を抜粋してみよう。
「わたしは、合理的なものほど美しいと思っている。そして、世の中で一番合理的なのは数学、次が天文学だ。数学は、基礎的なことを積み重ねていけば、誰でも同じ結論に達するわけで、こんな公平なものはない。・・・(中略)さて、三番目に合理的なのが探偵小説だ。これもちゃんとした理屈に基づき・・・」
そして、この先生は黒板に「Edgar Allan Poe」と書いて、日本の江戸川乱歩は、それをもじってペンネームにしたということなどを話したようだ。50年以上前のことを実によく覚えているものだと感心してしまう。自分を振り返ってみても、中学時代に先生が喋った印象的な言葉などほとんど何も思い出すことはできない。
佐野氏は当時から探偵小説に関心があったので、きっと「探偵小説が合理的だ」という言葉もよく理解できたのだろう。しかもデビューから50年間にもわたって作品を書き続けてきたということはすごいことでもあるな。