旬の時季にしか味わえない「季節限定品」・・・

「相鉄瓦版」2009.3月号より。
この号の特集は“色いろの春、到来”とあった。ここでは「本日は春野菜日和」と題してあるエッセイが目に入った。今では季節感がほとんどわからないほど、一年を通じて色とりどりの野菜や果物がスーパーには並び食卓に上ってくる。
しかし、旬の野菜は当然ながら他の季節のものより栄養価も高く、価格も安くなっている。夏野菜は体を冷やす効果が、また冬野菜は体を温める効果があるといわれている。そして、春野菜は体を目覚めさせたり調子を整えたりといった効果があるようだ。
ここには良いことずくめの「季節限定品」(野菜)が4つほど紹介されていた。
1、春キャベツの場合は、ふんわりと軽いものを選ぶのがいいという。
2、新玉ネギはみずみずしくてジューシーだそうだ。柔らかくて味も甘めで、火を通しすぎないことがポイントだった。
3、タケノコは「季節限定品」の代表格。鮮度の劣化が早い食材。購入したら冷蔵庫に入れるより先に湯出てしまった方がいい。
4、ソラ豆は春とはいっても4月下旬から6月が旬らしい。むしろ初夏の野菜だろう。塩ゆでが一番だった。
と、まあこれを書いているうちに早く味わってみたくなってしまった・・・


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「型をもたない個人には他の型には常に圧倒される」
「考える人」坪内祐三著より。
これは唐木順三の言葉だったが、べつにこのフレーズについてあれこれ書くつもりはない。これは一つの例として挙げただけだ。筆者の坪内氏は各作家たちの著作を引用しながら、その人らしい“考え方”を考察していこと試みている。
ここには16人の作家や文筆に携わった人たちをとり上げている。すべて故人だが有名な作家で読んだこともある人もいるが、まったく名前すら知らなかった人もいる。また、名前だけは聞いたことがあるが、大半は一冊をまるごと読んだ覚えがある人は数人だった。
その16人とは以下の人たちだった。小林秀雄田中小実昌中野重治武田百合子唐木順三神谷美恵子長谷川四郎森有正深代惇郎幸田文植草甚一吉田健一色川武大吉行淳之介須賀敦子福田恒存
これらの人たちの著作をほとんど読破していなければ、その人の“考え方”など想像できないだろう。筆者の坪内氏は、かつて読んだ本を再読しながら、また引用しながら書き綴っている。かなり根気がいる仕事にも思えた次第。
この本を一読してみて、ここに登場していた16人はみな深く“考える人”だということが印象として残った。またそれを考察していく筆者も実に“考える人”だとも感じた次第。これは一読して面白いというような本ではないが、じっくり味わえる一冊でもあるとは思えたな。

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ミスター「天声人語」といえば、・・・
「考える人」坪内祐三著より。
もしプロ野球ファンなら、“ミスター”といえばそのあとに何もついていなくても、それだけでミスタージャイアンツ長嶋茂雄であることは承知しているだろう。
しかし、ミスター「天声人語」といってすぐに思い浮かぶ人はわからなかった。筆者によれば、昭和30年代までは荒垣秀雄で、二代目ミスター「天声人語」は深代惇郎だった。これは常識らしい。
もともと「天声人語」にはほとんど関心がなかったし、以前はあまり朝日新聞も読んでいなかった。最近はどうか知らないが、私が受験生のころは大学入試にはこの「天声人語」からの出題が多いと言われていた。
ここでは深代淳郎をとりあげていたが、彼が名物コラム「天声人語」を担当していたのは1973年2月から1975年11月1日までだった。そのひと月半後に46歳の若さでこの世を去ってしまっていた。昭和4年生まれだからもし元気ならまだ書いていたかもしれない。
たまたま図書館に行ってみたら、氏の絶筆となった11月1日の「天声人語」を読むことができた。タイトルは「夢ー斑鳩」となっていて、聖徳太子について書かれた本を読んでの感想と自身の思いが綴られていた。そして最後に「いつかもう一度法隆寺を訪ねてみたい」となっていた。
天声人語はもう人生を十分に生き抜いた達人によって書かれたものだとばかり思っていたが、40代の論説委員によるものだと知ってちょっと意外な気もした次第。よほど、深い教養がなければ連日、数年にわたって書き続けることは不可能だろう。いま書いているのは何代目のミスター「天声人語」なのだろうか、とふと思ってしまった。


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「プロは持続を旨とすべし」
「考える人」坪内祐三著より。
色川武大について書かれている部分にあったワンフレーズだった。色川は若いころはばくちのプロだった。その経験から出たことばだった。彼の哲学では「フォーム」ということがキーワードになっている。
彼自身は次のように語っている。「フォームというのは、これだけきちんと守っていれば、いつでも六分四分で有利な条件を自分のものにできる、荘自分で信じることができるもの、それをいうんだな」
つまりプロは四分の不利が現れたときも動揺せずに同じフォームを守るからこそ六分勝てると考えている。そこで相撲を例にとって「九勝六敗を狙え」ともいう。相撲にとっての六分が九勝にあたる。
しかし常に九勝六敗を維持していけることは、並大抵ではないことだろう。大勝しても大負けするようではまだまだなのだ。もちろん大関横綱になる直前は高レベルの勝ちが要求されるだろうが。
ばくちの場合はフォームのほかに運も作用してくる。その運さえも総合的に捕まえて、コントロールしていくことで、一級品になれると色川は語っている。阿佐田哲也ペンネームで書いた『麻雀放浪記』は有名なヒット作品だった。