セリフを軽くするのは肉体訓練でね。

R25」2008.8.28号より。
俳優の津川雅彦さんの言葉だった。現在68歳で52年のキャリアがあった。子役時代を含めれば63年になるという。映画に出てくる役はいつもかなりの存在感がある。余裕というか貫禄を感じさせる。もともと両親も俳優で、祖父も日本初の職業的映画監督、叔父も叔母も、さらに兄の長門裕之も俳優という映画一族だった。
上記は最近「落語娘」という作品の中で落語家を演じた時にとくに実感したようだ。津川さんは落語でも歌舞伎でも“抜く業”があると感じている。一見すると力が入っているように見えても、ものすごく軽く言葉を操っているからだ。
また、「工夫を重ねることは、実は余計なところを削ってシンプルにしていく作業」とも述べている。きっと役になりきるには単にセリフを覚えた程度では物足りないということだろう。むしろ不自然さをまったく感じさせないために熟練工になるというような意識ではないだろうか。
だからこそ、「セリフを軽くするのは肉体訓練」という言葉がでてくるのだろう。落語は何百回と量をこなして口になじませたという。もしそうでもしなければ、筋肉をつけずにスポーツ選手を演じるに等しいと断言する。とにかく質より量を重視している。
どうやら「きちんとお客さんをだましきるため、俳優は詐欺師である」という部分も津川さんの言葉だろう。これもちょっと気になる。それは映画を観た人に“もしかしたらこんな人だったかもしれない”と思わせなければならないからかだ。とくに過去に実際に存在した歴史上の人物を演じる時などはそうだろう。


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籠もることのできる場所を持つこと・・・
フロイトで自己管理」齋藤孝著より。
ちょっと意外で面白いと感じたのは、齋藤氏にとって籠もれる場所はベッドの上だという。そこが氏の基地で、そこからあちこちに遠征しているようなイメージを持っているようだ。使っているベッドのマットのクッションが体にあっているらしく、横たわっていると沈み込んでいく感じでそこが妙に落ち着くらしい。
自分だけの基地または空間を持つことは意外に自分を解放してくれそうだ。たとえば、同僚が知らないような喫茶店で休憩しているときなどもそんな気持ちになれる。男の子なら大きな段ボールに入り込んだりすると自分だけの空間だと感じて面白いようだ。
そういえば、かなり以前俳優の谷啓クレージーキャッツ)が自分が一番落ち着くのは押入れの中だと言って、自宅の押し入れに入る場面があった。それはドラマではまく実際の自宅だった。きっちりとした自分だけの書斎があれば、そのスペースに籠もれればいいのだろうが、なかなかそんな余裕がある人は少ないかもしれない。
話はややそれるが、プロレスラーにはマスクマンというわれる選手がいるが、そのマスクをかぶっていることでそれなりのファイトをしていたのを思い出した。武藤敬司は素顔の時は正統派のレスリングをして顔にペインティングを施してグレート・ムタと名乗っていた時はかなり荒っぽいファイトをしていた。
これなども、マスクやペイントで別の演技者(?)になるという意識が働いているためだろう。意識して別のものになりきって力を発揮するためには、このようにある意味自分を何かで囲うことも一つの技のようにも思えてくる。鎧を身につける(=籠もる)と考えれば、別のパワーが生まれる可能性もありそうだがどうだろう。

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パピプペポの音には、歯切れよい語感が気持ちを引き立てる効果がある・・・
フロイトで自己管理」齋藤孝著より。
それにしても、この一冊では読み進むうちにいくつもの“ちょっと気になるフレーズ”に出会った。これは意外に誰にでも使えそうな技だと思ったので記しておこう。それは、要するに大げさに表現することで自分および周囲のテンションを上げるというようなものだった。その際、上記のようなパピプペポの音が入っているものが多いと気付いたのだ。
思い込みでも、もしそれを信じればいい結果になって現れるかもしれない。たとえば、「ノープロブレム!」「パーフェクト!」「カンペキ!」実際に問題があろうが、完璧でなかろうがかまわない。ハードルを下げてみることがポイントだった。
口に出すことにこそ意味があるようだ。相手も「そんなこと言ったってね〜」と、心のなかで半ば冗談で言っていることは百も承知でかまわない。私が時どき使うのは、お土産などいただきその場で口にして、すぐに「こんなにウマいもの食ったことない!」というフレーズだ。(もちろん言える相手は限られるが。)
齋藤氏はくだらないちょっとした思いつきでも「ジーニアスだ」とまるで呪文のように唱えているらしい。それで自分の気分を盛り上げているのだろう。いい意味でのオーバーな表現はその場を盛り上げる効果もあることは確かだ。パピプペポ・・・そういえば「ファイトー!イッパーツ!」っていうCMもありますね。