<名詞>の世界に浸っている人、<動詞>を大切にする人・・・

「プレジデント」2008.6.16付けより。
ちょっと珍しい表現に出会った気がした。話しているのは松屋社長の秋田正紀氏だった。名詞の世界とは「○○会社○○部○○課」のように自分が所属しているところを意味していた。ここでの名詞はやや名刺にも通じているようだった。また一方、動詞の世界とは「自分は何をするのか」という部分だった。
そこで、まず歴史上の人物を引き合いに出している。坂本竜馬は動詞型の典型だという。日本を変えるために何をしようと考え行動を起こしていたからだった。坂本に比べると、西郷隆盛桂小五郎はどちらかといえば、名詞の世界にいた人だったようだ。
松屋銀座本店は銀座地区の百貨店では五期連続で売上高首位「銀座一番店」の座についている。これは2001年に120億円を投じて行った創業以来最大規模の全面リニューアルの成果だった。秋田社長は現在まで成功しているのは、プロジェクトメンバーの熱意、愛社精神が強かったことも要因として挙げている。
これも部署という名目にとらわれずに、「お客様のために」どうしたらいいか、という動詞の世界が生かされた結果だと考えているようだ。1958年生まれの若い社長は「規模の大きさという主語に注目するより、大事なのはどんな店をつくるかという述語の部分」だともいう。これもまた深い言葉に思えた次第。
存在感は主語よりもむしろ個性をいかに発揮していけるかの述語の部分にかかっているようだ。何事にもあてはなりそうな比喩でもあるな。たとえば、野球でいえば巨額を投じた大型トレードによるチーム作りよりも、それぞれの選手の役割、特性を十分発揮させたチームを比較してみればわかりやすいかもしれない・・・

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偉大な人の人生が日々を生きるための燃料みたいなもの。
私塾のすすめ齋藤孝梅田望夫著より。
この本のサブタイトルは「ここから創造が生まれる」とあった。この両著者は同じ1960年の生まれだった。梅田氏は最先端でビジネスをしている人で理系に属する人だ。また齋藤氏は言うまでもなく大学教授で教育を専門としている文系の代表ともいえる。二人の対談は興味深いもの。
伝記ものなどは小学生の頃にたいていは読んだり聞かされたりしものだった。ほとんどの人はそれだけで知ったつもりになって、繰り返し読み返したりはしないだろう。
しかし、齋藤氏は小学生の頃から今までずっと伝記、自伝を読んで自己形成の柱としていたという。さらに「心の骨格を作った」とも表現している。これも面白い。
自分とはレベルがぜんぜん違っていても、あこがれるのはいいことのようだ。梅田氏はこれをロールモデル思考とも呼んでいる。天才、偉大と呼ばれている人は学ぶことがうまいらしい。そういう人からは何らかのヒントが得られるようだ。
齋藤氏はジャズ・トランペット奏者のマイルス・デイビスの自叙伝を読んで、音楽の分野でこんなふうに猛烈に学び続けているということがわかかれば、それを自分の領域に当てはめてみることも有効のようだと述べている。つまりそれが自分のエネルギーにもなるという。
当然偉人だからといって、何ごともうまくいっているわけではない。むしろ一般人よりも出会うトラブルは多いかもしれない。そのトラブルの乗り越え方も勉強になるはずだと考えている。


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本が商品から「自分だけの大切なもの」になる。
私塾のすすめ齋藤孝梅田望夫著より。
齋藤氏は精読するとき、赤、青、緑の3色ボールペンでキーワードをチェックしたり書き込みをしているという。かつてその「3色ボールペン」の本もベストセラーにはなったが私は読んだことはない。
このボールペンは武士にとっての刀みたいなもので、齋藤氏は3色ボールペンなしでは本は読めないとまでいう。つまり積極的な書き込み作業でその本が商品から「自分だけの大切なもの」になるようだ。
この3色ボールペンというのも何だか特殊なボールペンにも思える。私のペン立てには赤、青、緑+黒の4色ボーペンはあるがほとんど有効に使っているわけではなかった。やはり、読書していてちゃんと3色使うには訓練が必要そうだな。
本も借りたもの以外はほとんどが消耗品になっている。というのもたいてい本のあちこちに水性ボールペンで線を引いたり、空いたスペースに書き込みをしてしまうからだ。そのため読み終わって、不用になってもブックオフに売ることもできない。
だからきれいなまま読み終わった本は、自分にとっては面白くはなかったのかもしれない。(小説は別として)

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齋藤さんはライブのコンサートをたくさんやるミュージシャンと同じ・・・
私塾のすすめ齋藤孝梅田望夫著より。
これは梅田氏の発言だった。というのも齋藤氏が「〜初版五万部という本だったら、これで甲子園球場いっぱい・・。二万部なら武道館・・・」という表現を用いていたからだった。
書くということは実に地道な作業だが、上記のような想像をすると興奮につながるようだ。梅田氏は齋藤氏のホームページを見て著書を数えたという。すると2007年までの11年間で263冊で、ピークは2005年の67冊だったと驚愕している。
これは67回コンサートをやっているとも考えたようだ。とにかく齋藤氏はフル回転の情熱で書きまくっているように思える。どれも読みやすい本なので私などついついクセになって買ってしまう。手元にはまだ買ったばかりの新刊がある。
梅田氏がビジネスやネットの専門家なのに対して齋藤氏はネットにはあまり関心がないようだ。梅田氏はネットでの反応は早くてわかりやすいというが、本の場合はそれほど反応も早くはない。ブログでもアクセスが多いとは言ってもそのすべての人が読んでくれているわけでもない・・・(ですよね。)