「ま、いっか」「それがどうした」「人それぞれ」

「一個人主義」より。
この1冊には雑誌に掲載された著名人数十人のインタビュー記事がまとめられていた。上記フレーズは弘兼憲史さんの言葉だった。
そういえば、弘兼さんで思い出すのは、先日(5/29)付けの朝刊に「初芝五洋ホールディングス社長島耕作さん(60歳)・・・」と新聞の特集記事風に全面広告が掲載されていた。人気漫画の主人公の島耕作が社長に就任して、雑誌で新たな連載がスタートするので、その大げさな宣伝だった。文面がかなり真面目腐っているところが面白い。
以上はあまり関係ない前置きだった。弘兼氏の上記フレーズを目にした時、ふだんそんな言葉をすっかり忘れていたことを思い出した。
氏は大学生の頃から自分自身に言い続ける3つの言葉があった。それらは「ま、いっか」「それがどうした」「人それぞれ」というようなそれほど大それたことではなかった。要するにものごとにこだわらないためだという。
私たちはついつい人と何かを比較しがちで、自分が劣っているように思え、僻んだりすることもあるが、そんな時も「ま、いっか」「それがどうした」「人それぞれ」と、気持をうまく切り替えられれば強いかもしれない。時には気分がラクになりそうな気もするが・・・


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“組織人の皮膚化度”を点検する・・・
「一個人主義」より。
これは作家の横山秀夫さんの造語だった。「組織人の皮膚化度」とは「無意識のまま組織やら業界に染まっている度合」のことだった。
長年にわたって同じ会社にいると、知らず知らずのうちに身についてしまうへんな癖のようなものがある。たとえば、企業の購買担当窓口なら、取引業者が頭を下げるのは当たり前だというような態度をとってしまうことだ。
新聞記者なら場合によっては、名刺一枚で総理大臣に会えてしまう。担当する政治家が偉くなるにつれて、自分まで偉くなったと錯覚してしまうこともあるようだ。それは仕事の立場上やむをえないこともあるだろう。
ところが会社を離れた(退社した)とたんに、組織に所属していたことはなんの意味も持たなくなってしまうことは多くの人が異口同音に語っている。
組織人の皮膚化度を避けるためには、やはり時には自己点検も怠らないことが必要だと横山氏は指摘している。同じ組織に長くいる場合は気をつけねば。


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「自分の世界を持つことで人間は磨かれる」

「一個人主義」より。
作家の城山三郎氏の言葉だった。氏は36歳の時日本の作家代表団の一人として、中国に招かれていた。その際、何人かの政治家と面会していたが、周恩来首相の演劇に関する知識には驚かされたという。周首相は北京にある7つの劇場を7晩かけて芝居を観ていたようだ。
また外相の陳毅という人は怖い顔をしているが、文学青年でハンカチを絞るような恋愛小説が好きだと言ったらしい。要するにどんな地位にあろうとも、それぞれに自分の世界を持っていたのが印象的だったようだ。
国内では小泉元総理のことをおもしろい存在だと語っている。まだ総理になる前、大晦日の夜に二人で会ったとき、「正月は一人で海外で過ごす」と聞いて変わっているが自分の世界を持った人だと思ったという。
最後に力を発揮できるのは、結局は組織や古い価値観に左右されない人間だと、城山氏は語っているが、小泉元総理の支持率は高かったのはそんなところにもあるようだ。
最後にもう一度、城山氏の味のあるフレーズを書いておこう。「自分で追究できる世界、そこを大切にして生きるということが、深みのある自分らしい人生を切り拓くことにつながる・・・」

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