新しい発想は豊かな環境の中では生まれません。

朝日新聞、土曜版」2007.9.8より。
もう10日も前に目にした新聞記事だが、妙に気になっていた。それが上記のフレーズ。そしてもう一度読み返してみた。そのあとには次のように続いていた。
「逆境で死にもの狂いになった時に苦し紛れにうまれるものです」。これは世界にコンパクトスピーカーのジャンルを確立したボーズ社長の佐倉住嘉さん(71)が、「商品企画のアイデアはどうやって生まれるのですか?」という質問に対しての返事だった。
昔から言われるのが「窮すれば通ず」だったが、上記は氏が本当に逆境に耐え苦しんで生み出したからこそ発することができた言葉なのだろう。世界に通じる発想はそうやすやすとは見つかるわけではなかったのだな。
茶店や飲食店にはいると時々黒いレンガのような形をしたスピーカーが天井からぶら下がっているのを目にする。ふつう家電製品は2年ほどでモデルチェンジをするが、これはもう25年も売れ続けている。それはその技術の素晴らしさがあるからに違いない。
もちろん優れた製品はすぐに模倣される。しかし、佐倉さんは特許権さえ侵害されない限りは、いくらでもまねて結構だという。やはりそれだけの自信があるからこそ世界にも通用するのだろう。
新しい発想は意外に身近でつかめるかもしれない、でもそれに気がつくまでに膨大な時間と努力がなければならないのだろう・・・な。ただ単に大きいスピーカーを小さくして天井からぶら下げただけではなかったのだ。技術的な裏付けがあって、人に感動を与えられて初めてすぐれた製品といえるのかも。

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持ちモノを媒介すると雄弁になる人々・・・
「かけがえのない日々」柳田邦男著より。
精神科医の大平健先生によると、そんな人々のことを「モノ語りの人々」と名づけているようだ。物語といって思い浮かべるのは、竹取物語源氏物語というタイトルだったりする。またギリシャ神話や日本や世界の童話、民話なども物語でもあるだろう。
成長過程ではいろいろな物語に親しみ、聞いたり読んだりしてきたはずだ。そして自分や家族友達関係などを語る時にも同様に物語るということになる。しかし、最近では自分や他人について語ることができない人が多くなってきているという。
自分はフツーだとか、ビミョー、なんとなくというようにかなりあいまいな表現を耳にすることがある。要するに話していることが具体的に見えてこない。ところが、持ちモノやブランドのこととなると、急に饒舌になるようだ。
べつにブランドファッションばかりでなく、テレビの人気番組やタレントについてや流行りのレストランなどのことになると、かなり雄弁になるのだ。
逆にいえば、モノがなければ、あまり物語れないということになるか。できれば、モノばかりに流されずに自分なりの価値観で物語りたいもの・・・だな。


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事実に語らせることによる衝撃力・・・
「かけがえのない日々」柳田邦男著より。
日本を代表をするピアニストの中村紘子さんは1989年に『チャイコフスキーコンクール』で第二十回大宅荘一ノンフィクション賞を受けている。つまりプロの作家でもあるというわけだ。才能のある人は本当にすごいものだと感心してしまう。その賞を受賞したのはピアニストとしてデビューして三十年目のことだった。
筆者の柳田氏が《ウ〜ン》と唸ってしまったのは、『ピアニストという蛮族』を読んだときだった。文章のなかに次のような箇所があった。
「たった一曲を弾くのに、例えばラフマニノフの『ピアノ協奏曲第三番』では、私自身半日かかって数えたところでは、二万八千七百三十六個のオヤマジャクシを頭と体で覚えて弾くのである。・・・」
これほど詳細な数字を文章のなかに持ち込んだ表現方法あるいは表現力に対して驚いている。「二万個以上のもの」や「膨大な数のオタマジャクシ」でもリアリティは出てこない。
正確に「二万八千七百三十六個」という事実を知るとインパクトはある。これが事実に語らせるということになる。
しかもわずか一行のために、多忙ななかを半日もかけて自分自身で数えたというところにも、プロ根性を感じざるを得ない。弾いても書いてもさすがやはりプロは違う!

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パソコンの寿命を縮める「熱暴走」
R25」2007.9.13号より。
ページを捲っているうちに自然とこの部分に目が止まってしまった。そこには次のような箇所があった。「故障は夏の終わりにやってくる」「パソコンにとって残暑は危険なシーズンだ」「ハードディスクは60度Cを超えはじめたら故障前のサイン」
私が毎日のように使っていたノートパソコンが9月のはじめダウンしてしまった。とりあえずリカバリーディスクで買った時の状態に戻し再生できた・・・・・と思ったものの一週間後再度ダウンしてしまい、リカバリーさえ不能となってしまった。
パソコンを構成するCPUやメモリーといった電子部品には、正常に作動する「動作温度」が定められているらしい。そういえば、私のノートPCはかなり熱くなっていた。気温が30度Cの部屋ならば、内部は100度C近い高温になるケースもあるようだ。
やはりダウンした原因は発熱だったかもしれない。人間も同様に体温が上がれば、動くことも容易ではないのと同じ理屈だろう。結局新しいパソコンに買い替えてしまった・・・。その一週間後ダウンしたパソコンのほうは、ハードディスクを入れ替えて再生のはできたが、思いのほか時間を費やしてしまった!
蛇足
最後にパソコンの熱暴走を防ぐコツがあったので、記しておこう。
1、通気のよい場所に設置する。2、ベッドの上で使わない。3、ホコリを溜めない。4、タバコの煙をあてない。5、暑すぎる部屋で使わない。
私の場合、1、3、5があてはまっていたかも・・・