運命のいたずら・・・

日経新聞、夕刊」2007.2.19〜23より。
“人間発見”というコーナーで5日間にわたって、出光興産社長の天坊昭彦氏(67)のインタビュー記事が掲載されていた。その始めの部分にあったフレーズ。そこには出光に入社するまでのいきさつが触れられていた。
冷やかし半分の就職活動をしていたという。(大学4年の頃だろうか)落ちても恥ずかしくないと思い、日本興行銀行(現みずほコーポレート銀行)を受験し、数回の面接もパスし、人事部長面接が決まっていた。
ここで、運命のいたずらが起こっている。面接時間に行ってみると人事部長の都合が悪くなり、数時間待たされることになったのだ。そこで、近くに本社があった出光にふらりと訪問すると、採用担当者の強引な勧誘で、翌日の試験を受けることになってしまったのだ。そして、試験を受けて自宅へ帰る前に合格電報が届いてしたという。
入社直後は出光直営のガソリンスタンド勤務で、コンクリートの床面をブラシで磨き、ポンプで給油という重労働をさせられている。また営業では当時得意先だった銭湯に行き、深夜になってようやく支払いをしてもらったりという苦労を重ねている。
数年後の異動の際には志願して石油開発部に配属されていた。海外での石油開発では命がけ経験もされている。開発プロジェクトは常に危険と隣りあわせの仕事だったようだ。その後ロンドンでの現地法人の社長などを経て帰国後取締役となっている。
そして2002年6月には社長に就任していた。(それはご本人には想定外のことだったらしいが。)そして会社の財務体質強化のため、昨年(平成18年10月)東証一部上場を果たしている。これも、出光家出身でない天坊さんだからこそ、実現できたのだろう。
本当に実力ある人は“運命のいたずら”さえも味方につけて、大会社の社長にまで登りつめてしまうのか・・・
蛇足
私が珍しい天坊さんというお名前を知ったのは、約20年前で仕事がらみだった。当時の肩書きは経理課長だったはず。その後最近まで何度かお会いしたことはあるが、そのたび優しいお声をかけてくださる。


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思い出や感動といった“プライスレスなものにプライスを付ける”こと・・・
「NEXTWISE」2007.4月号より。
都内のあるテレビ番組制作会社の紹介記事のなかにあったフレーズ。この会社ではニュースやドキュメンタリー番組を手がけている。そして新しいサービスについて触れていた。
この会社に「ある会社の社長から、一代で築いた会社の軌跡と自分の人生を映像として残したい」という話しが持ち込まれた。つまりそれは当然ビジネスということになる。
それを制作したところ、出来ばえがよかったようで、完成したものは非常に喜ばれたようだ。それはプロが作るわけだから満足されるのは当然だろう。一冊の本として自分史を残したい人は一部にはいるようだが、このように映像を希望する人もいたのだ。
人の個人的な思い出や社歴や記録自体には値段はついていない。しかし、それを映像作品にすることで感動的で貴重な商品にも変わる。そしてこの会社はプロが作る映像版の自分史「ドラマチック人生」を作っているというわけだ。
誰もがそうそうドラマチックな人生を歩んでいるわけではないだろう。しかし、一見平凡に見える日々も、異なる毎日を送っていることにことにも気づく。出会う人、そこでの会話内容、仕事内容、目にするもの、手にしたもの・・・。一日として全く同じ日はありえない。
気力、体力が充実しているときほど、多くのことを経験しているようにも思えるが。自分を主役としたドキュメンタリー映画ってわけか。面白いことを考えビジネスにする人もいるものだ・・・な。