人間は能率のために生きているのではないのです。

朝日新聞、朝刊」2006.11.14付けより。
“朝日求人”というコーナーで編み物の専門家広瀬光治さんが述べていたこと。数年前、何となくNHKテレビ番組「おしゃれ工房」で広瀬さんのニットの手編み何度か観たことがある。べつに私自身は編み物に関心があるわけではないが、その教え方が丁寧で上手だったのを覚えている。
あわただしく毎日が過ぎていってしまうと、つい能率や効率を優先したくなってしまう。しかし、だからこそじっくり、ゆっくりした時間を過ごしたいとも思う。編み物は手間隙がかかるものだ。しかし、それに没頭している時間はゆったりと流れているのかもしれない。
広瀬さんは中学時代にごく自然に編み物を楽しみ、クラスメートに手袋をプレゼントしたほどだったという。もともと才能があったのだろう。家族も友達も男の子が編み物をするなんて、とはひと言も言わなかったようだ。
この部分は華道家假屋崎省吾さんが、子供の頃ほかの同級生たちが野球に熱中していている時でも、自分だけは庭の植物を眺めていたのとよく似ている。周囲の理解と子供のころから自分の好きな道や才能が明確だったことがうかがえる。
広瀬さんは、1人でも多く編み物の楽しさを知ってほしいという思いから全国を献身的に回って指導している。サービス精神もまた一流のようだ。
このコーナーの最後の部分も興味深かった。それは広瀬さんが「糸偏の力」といっているものだった。編む、結ぶ、絆、縁。どれも、若い人や子供たちにも残したい優しい力だという。
蛇足
毎年、年賀状の季節になると思い出すのは、裏表がすべて印刷のものは味気ないということだ。能率や効率を考えたら大量に送付するなら手書きは大変に違いない。
しかし、どこかに直筆のわざわざ感があれば、それなりに相手には伝わるものはあるだろう。すでに年賀状の用意はしてあるが、いつ頃書き始めようかな・・・