どんな小さなことでも、自分で発見することの悦びにまさるものはない

「夕顔」白洲正子著より。
あるとき白州さんのところに雑誌社から次のような依頼の電話があった。・・・「あなたは旅行好きだから、隠れたところにある温泉場や静かな宿屋を知っているだろう。そんな秘境を教えて欲しい」という内容だった。
もちろん白洲さんは、そのような場所はご存知だったが、教えたとたんに大勢人が押し寄せて、秘境が秘境でなくなると思ったのだ。そこで、大切なところだから発表するわけには行かないと断ったという。
すると、雑誌の担当者は二番手でもいいから教えて欲しいと食い下がってきた。それに対して白州さんは、二番手なんかに興味がないというと、やっと諦めたという。さすが一流のものだけを追求する白洲さんの答えは違うなと感じた次第。
彼女は“人が何十年もかかって探したかくれ家を、電話一本で聞きだそうなんて、いい気なものだ”と思ったらしい。よくテレビで秘境の温泉宿の特集番組があるが、その後はたいてい混雑して、従来の常連さんには迷惑なことだろう。
自分にとっての、いごこちがいい場所は自分で発見してこそ本当の悦びを感じられるのだろう・・・な。