あまりにスピーディーに得られる正解は、迷う楽しみを人生から奪って

R25」2006.1.26(No78)より。
こう述べているのは作家の石田衣良だった。何かを調べようとするとき、パソコンの検索画面にキーワードを入れてエンターを押せば、関連情報がずらっと出てくる。そのなかに欲しい正解を見つけることもできる。
確かに便利だが、それと同時に失っているものもある。私は自分で読んだ本のなかに、パソコンで検索した結果以外のことを見つけたときには、ちょっと嬉しくもなる。つまり、それは寄り道をしたことで、新たな発見をしたようなものだ。
自分の日常生活でのことを振り返ってみよう。何でも簡単に正解が得られることは気持ちがいいかもしれないが、ちょっともの足りなさも感じられる。それに引き換え、とくにこれといった目的(あて)もなく、書店や図書館に入ると、どれを手に取ったらいいか迷ってしまうが、そんな無駄とも思える時間は贅沢で楽しい。
そして何気なく手に取った本や衝動買いした本が、後になってみると結構自分に有意義だったりしたものだ。目的の本をさっと、見つけるのもいいが、たまには無目的な本探しも悪くない。
似たようなことは人の話を聞く場合もそうだ。さまざまな人生経験を積んだ人はたいてい、寄り道、回り道をして、わき道に入ったり道草を食ったりしている。そういう人たちの話は聞いていても楽しい。時には、あれこれ迷って無駄とも思える時間の中にも、楽しみを見つけたいもの。誰にでも、お手軽に得られる正解は、意外にもありきたりで退屈なものかも・・・