人間と道具と素材のトライアングルの関係・・・

「職人暮らし」原田多加司著より。
筆者の原田氏は、檜皮葺師、柿葺師(創業1771年)の10代目原田真光を襲名している。国宝・重要文化財など指定建造物多数を手がけている職人。
タイトルのフレーズの部分をもう一度見てみよう。「人間と道具と素材の関係は、微妙なバランスの上に立っている。道具と素材の間には常に自分の体があるといえる・・・(中略)・・・職人にとって道具は自分の分身のようなものであり、また手の延長のような存在である。」
体験を通したこの人の言葉になんだか、ぞくぞくとさせられてしまう。改めて、国の重要文化財はこのような職人さんによって守られているのかと気づかされる。過去の貴重な歴史を後世に残すためには常に管理や修復が必要なのだ。
伝統的な技術を伝承するには、単なる技術を超えて芸術の域に達しているとも言ってもようさそうだ。そして、厳しい修練や精進に耐えられた者だけが後継者となりえるシステムだった。現役の職人は若い弟子にマンツーマンで教えていくしかない。例えば、「塩梅」とか「加減」といった数値にならない表現をちゃんと伝えるのはかなり難しいことらしい。
人間と道具との関係だけなら、スポーツにも似たようなことがいえそうだ。例えば、ゴルファーとクラブ、野球選手とバットやグローブとの関係など・・・しかし、そこに素材が入ってくると、むしろ料理人に近いかもしれない。
私たちはふつう何でもマニュアルにたよりがちだが、職人の世界ではどこにも書かれていない何かを体で覚えて、経験の中からノウハウをつかみとっていくことでもありそうだ。自分の日々の仕事にも生かせたらいいが・・・