人間はどうも物事を複雑にしたがるくせがあるよに思う。

名画感応術」横尾忠則著より。
横尾氏は絵画をどう観るか、ということについて、そんなに難しく考える必要はないという。
もしかしたら、一部の作家や評論家の中にはこの作品の崇高さをそんなに簡単にわかってたまるかというふうに考えているかも知れない。確かに一部にはそんな作品もあるだろう。でも、楽しむための絵画ではそんなものはごくごく一部だと思える。
絵画に限らず、どんなことも複雑にすればするほど知的になったように勘違いする人も多いようだ。しかし、そんなことはない。むしろ誰にでもわかりやすく平易にであることのほうがもっと大切だと思える。複雑な表現を使ったところで、相手に理解されなければ全く意味のないものだろう。
私はいつも単純なせいか、シンプル・イズ・ベストと考えている。たとえば、関係ないかも知れないが、数学の公式や定理はシンプルであるからある意味美しいとも感じられる。その公式に当てはめれば、誰でも容易に答えが求められるというのはきわめてありがたいことだ。
話しは絵画にもどって、かつて私は20代から30代にかけて約15年間ほど、某美術協会の会員として多くの油彩画を描いていたことがある。描いていたのは主に具象絵画だったが、あるときメンバーの1人に抽象画はどう観たらいいのかと質問したことがあった。
するとその人はネクタイの模様を眺めると思えばいい、と言われたことがある。そのとき、なるほどそうだったのか、と納得した覚えがある。確かにネクタイを選ぶときは理屈抜きだ。ぱっと見てそれが自分にとって気に入るかどうかだけしか考えてない。
つまり、わかるとかわからないなど、複雑なことは考えずにただ楽しく鑑賞できればいいということだったのだ。