インキ一本分の鉛筆。

これは私の持っている鉛筆のボディーに書いてある言葉だ。もちろん、米国製なので、英語で“ A Bottle of Ink in a Pencil.”とある。
25年前に購入してふだんは使わない引き出しの奥にはいっていたものだ。ちょっとユニークな鉛筆だったので記念にとっておいたもの。30年近く前に「何を書くかどう書くか」(板坂元著)を読んだとき、この鉛筆を知ってどうしても欲しくなった思い出がある。その鉛筆を始めて手にしたのは小学生のころだった。友達に一本もらった記憶がある。そして成人してから、先ほどの本をよんだら急に懐かしくなり手にとってみたくなったのだ。
しかし、都内のいくつかの文房具店をあたったものの売られてはいなかった。その後米国へ旅行をする機会があたので、現地でもさがしたがやはり見つけることは出来なかった。それから一年後、新橋駅近くを歩いていたとき、文房具店の店頭で偶然にもそれを目にすることができたのです。1本180円。うれしくて、3本購入。1本は人にあげて、1本は使い、1本は記念にとっておくことにした。
ノートに書いたときは普通の鉛筆とまったく変わらないが、年数がたつにつれて空気中の水分を含んでインキに変わるというもの。鉛筆の軸にはNOBLOT INK PENCILとも印刷されている。 正確にはNO BLOT で(インクなどの)しみで汚れない、という意味になる。
万年筆を使わなくなったのでインキということばも最近聞かなくなりましたが、たった1本の鉛筆にも郷愁を感じることってあるんですね。